『日本学術振興会特別研究員』をご存知ですか?   口腔細菌学講座 佐藤拓一

 私も数年前までは、歯学部の学生・大学院生という身分で、この「歯学部ニュース
」をもらえたのですが、今は正式な職員じゃないので、ちょっと失敬して読んでいる
という状態です。いわゆる部外者なので、投稿しても良いのかと悩みましたが、定期
的な読者であり、そんじょそこらの正式な読者よりは目をよく通しているつもりなの
で、思い切って、投稿しちゃいます。
 私は今は「日本学術振興会特別研究員」(略して学振)という、正式な所属機関のな
い身分です。正式じゃないけど、研究従事機関はある訳で、いわゆる所属は表記した
通りになります。日本学術振興会は、文部省関連の特殊法人で、学振という制度は、
「昭和60年度より本格的フェローシップ制度として文部省が創設した」と通知には書
いてあり、日本育英会の奨学金(返済の義務有り)の代わりに、若手(34歳未満)を対象
に、博士課程の大学院生(DC)と博士号取得者(PD)に、生活費(研究奨励金、返済の義
務無し)と研究費(文部省科学研究費補助金:いわゆる科研費)を2〜3年間、与えて
、若手の研究者を育成しようというものです。この特別研究員に採用されるには競争
が非常に激しいです。新規採用数は毎年、増えていて、平成8年度は全国の大学・大
学院で1,000名採用の予定だそうです。現在の累積総数は約2,100名のようです。全国
の歯学部・歯科大学(29校)でも、毎年、数名、採用になり、現在30名近くは、いるの
ではないでしょうか?新潟大学歯学部にも、現在2名います。採用されるには大変、
難しいですが、採用されれば、快適な制度です。特別研究員に採用された人だけが申
請できる科研費(特別研究員奨励費)があり、これは計画調書を出せば、減額されるこ
となく、ほぼ100%当たりますので、毎年、「当たった、はずれた」と一喜一憂しな
いで済みます。また科研費で出張する時だって、若手の助手よりは旅費算出のランク
が1つ上、らしいです。 
 こう書いてくると良さそうな制度ですが、正式な職員じゃなく、したがって職員録
にも載りませんので、身分は何となく、不安定な感じがしますし、大学から職員へ配
布されるさまざまな通知・情報誌は来ないし、健康診断だって受けられません(本人
の責任で、市町村の通知により受検しなければならないらしい)。それに国保だし、
国民年金だし、研究奨励金に所得税はかかるし、ボーナスは出ないし、各種手当はつ
かないし・・・。また、私の場合、今年度でこの期限が切れるので、来年度は完全な
フリーになってしまいます。基礎講座には研究員制度(臨床講座の医員に相当する)が
無いんですよ。知ってました?留学生ばかり優遇する今の制度(&留学生には甘い雰
囲気)には山ほど文句がありますが、唯一、ここに書くとすると、大学院修了者で、
研究(&研究歴)を継続したい場合、留学生だと「新潟大学外国人客員研究員」になれ
て、日本人だと「研究生」にしかなれない。たとえ、常勤していても、非常勤講師や
聴講生じゃ、研究歴の継続にはならないらしい。客員研究員は無給だけど、研究生は
授業料がかかるし、一方は「研究員」扱いで、もう一方は「学生」扱いですからね。
履歴にも、この差は大きい、と感じてしまいます。無給でも良いから、歯学部内に、
大学院修了者(又は学振終了者)をポスドク(研究員)とする制度の創設をぜひ、御検討
いただきたいと思います。今、一部の臨床系講座を除いて、大学院生が少なくて、6
年生等に進学を勧めるという話をよく聞きます。しかし、大学院に進んで、その後、
どうなるのか?という保証がない場合、とても後輩には勧められない。本当に研究が
やってみたいという学生さんにはお勧めですけど。