講演会報告

「顎関節症における関節病態」

第2補綴科 折笠紀晶


新潟大学歯学部同窓会学術講演会の今年度のテーマは「顎口腔系の機能異常と治療」ということで第l回目の講演会が8月27日に山形大学医学部歯科・口腔外科学講座の柴田孝典助教授をお招きして新潟県歯科医師会館にて行われた。「顎関節症における関節病態」という演題で柴田先生に学生の講義に使用しているプリントを用意していただきそれにそって訂演していただいた。講演会場は午前中は会譲室を使用したが椅子が足りなく立ち見がでるほどの盛況ぶりで、午後からはホールに場所を移し、約5時間にもわたる充実した講演会であった。
講演はまず顎門節の解剖からはじまった。数多くの顎関節部剖検のスライドをもとに正常所見、円板の前方転位、外側翼突筋の関節頭への付着に個体差が多く2頭筋として認められるのは6割程度であったことなどを説明していただいた。また関節円板は血管が認められない線維性結合組織であり関節周囲の滑膜組織によってつくられる滑液が関節機能時に円板から流出し、安静時に流入することによりその代謝が行われているということだった。同様に円板後方部の血管網には下顎頭が前方へ滑走したときに血管網が広がり血液が入り、閉口時に血液は関節周囲に循環するため開口障害は循環障害をひきおこし、滑液の代謝にも影讐するとのことだった。
次に顎関節病態の経過として顎関節への咬みしめ、歯ぎしり等の各種負荷が関節内結合組織の微小炎症を惹起しそれが慢性化することにより円板転位、円板変形および変性をきたすこと、関節は動かなくなれば、3ケ月で癒着しはじめることを話された。
また顎関節は、6歳ぐらいで関節の形ができ始め、l3、4歳ぐらいでほぽ形が整い、20代半ばまで石灰化が進みそれ以降は老化するということで先生は学童期以前の顎関節症状は経過観察することを強調された。
顎関節症の治療においては95%が保存的療法でDawsonのバイラテラルテクニックやルシアのジグで咬合採得して作製したスタビリゼーションスプリントを多用しているとのことだった。
医学部の中の歯科講座という性質上、非常に多くの症例を診断から補綴処置を含む最終治療まで手がけられていて、その数多くのデータに裏付けされた講演で非常に理解しやすかった。新潟大学歯学部においても特殊治療部の野村先生を中,L、に顎関節症作業部会が発足され、学内での顎関節症への対応が統一された時期においてのタイムリーな講演会だったと考えられる。
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