素顔拝見・・・素顔点描     歯科麻酔科  瀬 尾 憲 司

 35歳、1女の父である。新潟生まれの新潟育ちであり、1昨年から昨年までの1年3ヶ月間、カナダに留学するまではほとんど新潟で過ごしている。新潟がそれ程好きというわけでもないのだが、特別離れる理由もなかったのである。しかし、海外で生活してみて初めてわかったことであるが、新潟には天気の悪い日が多く、そして旅行するところは数あれど遊ぶところがないと思った。この遊ぶところがないと言うのは、恐らく東京、大阪などの一部の大都市を除いては日本国中で共通しているとは思うが、そもそもこれは日本人が遊びに関しては豊かな文化を有していないことに起因しているのではないかと思うことがある。どこで何をしても高額のお金を使わねばならず、使ったからといって十分な心の保養を得ることは出来ず、かえって遊んだから疲れてしまうことが多い。  これに対して、日本は食文化には優れたものがあると思っている。とりわけ新潟に住んでいて良かったと思うのは、酒も魚も肉であっても、何でも程々美味しいものが気軽に手に入る環境にあることである。新潟に住んでいると他の土地へ旅行しても、それ以上にうまいものに出くわす機会が少ないような気がする。外国人に“新潟”を説明する時には、必ず私は酒と魚のうまいところと話してきた。さてわが家の食卓のおかずは、基本的には酒の肴のようなものが作られる事が多いため、つい食事の前に酒が入ってしまう。最近では健康のことも考えて少しずつ酒を減らすように努力はしているが、どうも“今日は徹底的に飲むぞ”という昔からの勢いが意に反して不意に盛り上がることがいまだにあり、これが日々の努力を一掃してくれることがある。私の場合、お酒は美味しいものがあるときに欲しくなるものであるため、お酒だけを飲むことはない。酒の肴が多ければ多いほど、飲む酒の量も増えるのである。そのため翌日気分が悪くなるときとは、ほとんどが食べ過ぎが問題であったことが多い。酒の種類では日本酒やビール、ワインは飲むが、ウイスキー類を好んで飲むことはない。日本酒やワインは食べながら飲んでいろいろ楽しめるが、ウイスキー類では酒の肴の美味しさが引き立たされないものと思っているからであるが、これは私一人の先入観だろうか。そして食べるものよって、古今東西のいろいろな酒を選んで、時にはうまく組み合わせて楽しむことが出来るということは、日本にいるから、そして新潟にいるから出来ることであり素晴らしいことであり、非常にありがたいとも思っている。  時々、寿司屋へ酒を飲みに行くことがあるが、これこそ贅沢な新潟の楽しみ方と思っている。しかし、いろいろな店をまわってはみるもののなかなか良い店にありつくことが出来ていない。比較文化論などを突き進める気は毛頭なく、新潟の寿司屋がなぜうまいのかくらいは分析したいと思うのだが、このためにはまだまだいろいろと取材が必要であるようだ。
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