平成10年度学術講演

審美歯科診療〜審美・機能・形態・炎症のコントロールをめざして〜
北九州市開業 筒井昌秀先生の講演を聞いて

歯科矯正科大学院1年 細貝暁子

平成10年10月25日に新潟大学医学部有壬記念館において筒井昌秀先生をお迎えして、新潟大学歯学部同窓会主催の学術講演会が催されました。そこに参加する機会を得たためここに感想を書かせて頂きます。講演課題の審美歯科というと昨今、松田聖子の再婚相手が審美歯科医ということでマスコミ等で大きく取り上げられ、注目をあつめています。マスコミ等で取り上げる審美歯科は歯を自くしたり、ラミネート・ベニアを張ったりというコスメティクなイメージが強く、私自身そのような内容の講演を予想していました。しかし、この予想はよい意味で完全に裏切られました。

その講演内容は、元来歯科医療が扱う「形態・機能・炎症・審美」の4つの要素に対して、その優先順位に則ったバランスのとれた医療を如何に患者さんに提供するかというもので、包括的観点からのアプローチがあって始めて、審美歯科なるものが付随してくるというものでした。あくまでも審美的要素は結果であり、過程としての「形態・機能・炎症」という要因のコントロールの延長線上に審美(エステティック)なるものが存在し、歯科臨床において重要なことは「成長・発育・成熟・老化」の各々の過程において、顎口腔機能と周辺諸組織の変化を将来にわり把握し維持・安定をはかり、全身の健康に寄与する
ことであると主張されました。

具体的には、100以上の症例について報告およぴ解説をしていただきました。エンド、ペリオ、クラウン、ブリッジ、デンチャー、インプラント、歯周外科、矯正、メインテナ
ンス、等々、包括的歯科診療を目の当たりにし、卒後1年日の私にとっては、その診療内容が高度すぎ、今後、学ばなけれぱならないことの多さに、途方に暮れる事の方が多く、歯科の奥深さを感じずにはいられませんでした。講演最後の質疑応答時に、筒井先生がおしゃられていたことには、こうした診療は、そのほとんどが独学で、文献を読み、とにかく手を動かしてみた結果だそうで、胃の痛くなる日々の連続であったと言うお話しでした。また、ここ20数年間は昼食をとったことがなく、昼休みとなり診療室に一般の患者さんがいなくなった時間にインプラント、歯周外科等の小手術の時間に当てているとのお話しには、医療人としての筒井先生の偉大さを感じました。そして、常に患者さんに対しベストの治療は何かという探求心を持ち続けられ、日々、挑戦されている姿勢に感銘を受けま
した。

毎日の忙しさにかまけてつい、本当の自分の目標を見失ってしまいがちでしたが、今日ここで大きな方向づけをいただき感謝しています。


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