平成18年度新潟大学歯学部同窓会・総会学術講演 

日時:平成19年4月15日(土)午後2時45分から4時15分
会場:新潟大学歯学部講堂(2F)


骨質を踏まえた歯科領域の骨再生に関する組織学的知見

新潟大学超域研究機構 網塚憲生教授(18期生)

 <講演要旨>
 歯科領域において、骨欠損またはインプラント植立での再生骨をいかに量的に増やすかという試みが行われてきました。咬合圧などが負荷する歯科領域では、骨量を増やすことが力学強度を与えることにつながります。このような考え方は全身の骨においても同様であり、1993年の国際骨粗鬆症シンポジウムでは、「骨粗鬆症では低骨量と骨量構造の悪化の結果、骨が脆弱になる」と記載され、これまでに、骨粗鬆症の指標として骨量を反映する骨密度が取り上げられてきました。

しかしながら、近年、骨質(bone quality)という骨の材質的な面が注目を浴びてきています。何故なら、一見して骨が増えても、強度的に脆弱であったり骨吸収が進んでしまう例、すなわち、骨密度だけでは評価しにくいケースがあることが指摘されるようになってきたからです。2000年の米国国立衛生研究所(National Institute of Health)のコンセンサス会議において、骨粗鬆症の概念に骨強度が盛り込まれ、「骨強度=骨密度+骨質」と定義づけられました。さらに、骨密度と骨質がどれだけ骨強度を反映しているか試算すると、約60-70%程度が骨密度、残りの約30%程度が「骨質」にゆだねられると推測されています。しかし、骨質のパラメーターを決定することは容易ではなく、現在、骨代謝回転、マイクロダメージの蓄積、骨基質の性状、皮質骨・海綿骨の高次構造の面から、骨質を踏まえた骨粗鬆症治療や再生骨について、活発な研究・議論がなされています。

さて、歯科領域において、骨欠損の骨再生を図るときには、各種のバイオマテリアルが使用され、またGBRとの併用も行われております。これらバイオマテリアルの性質や応用方法によって再生骨の形成様式が異なり、従って、上述の「骨質」にも影響が及ぶと考えられます。

本講演では、その前半に骨質の概念をご紹介し、後半では基礎研究で得られた各種バイオマテリアルを用いた再生骨を骨質の面から考察して行きたいと思います。

略 歴

学歴

1988年3月31日   新潟大学歯学部卒業(18期生)

1992年3月31日   新潟大学大学院歯学研究科修了 

職歴

1992年4月1日   新潟大学 助手 歯学部 口腔解剖学第一講座

1992年11月1日   post-doctoral fellow カナダ・モントリオール、McGill大学医学部

カルシウム研究所(1995年3月31日まで)

2001年4月1日  新潟大学 助手 大学院医歯学総合研究科 

顎顔面再建学講座 硬組織形態学分野

2002年1月1日 新潟大学 助教授 大学院医歯学総合研究科 

摂食環境制御学講座 顎顔面解剖学分野

2003年5月15日 新潟大学 超域研究機構・兼務(プロジェクトリーダー)

2005年9月1日       新潟大学 超域研究機構・教授

所属学会

日本解剖学会 評議員

日本骨形態計測学会 理事・評議員

日本骨代謝学会 評議員

新潟歯学会 評議員

歯科基礎医学会 評議員

日本細胞生物学会 会員

国際組織細胞学会 会員

日本小児歯科学会 会員

International Association for Dental Research 会員

The American Society for Bone and Mineral Research 会員

International Bone and Mineral Society 会員

主な研究

骨組織形成における分子細胞生物学的研究、骨粗鬆症治療薬の作用における細胞組織的解析、骨質に関わるbone tissue engineeringなど