ご遺体を用いた肉眼解剖学研究について 

 

新潟大学 大学院医歯学総合研究科 顎顔面再建学講座 硬組織形態学分野では、死体解剖保存法、医学及び歯学の教育のための献体に関する法律に基づく、故人(新潟白菊会会員)および遺族から同意を受けたご遺体を用いた歯学研究を行っています。本研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」ならびに日本解剖学会策定の「解剖体を用いた研究についての考え方と実施に関するガイドライン」に従い行っています。

現在行っている研究テーマは下記の様になっています。

 

1.      ヒトにおけるインプラント手術時合併症のリスク因子に関する肉眼解剖学研究

【成果と研究内容】

l  The Occurrence Rate and Diameter of Arteries Traveling Near the Mandible and an Assessment of the Relative Hemorrhage Risk in Implant Surgery.
Katsumi Y, Takagi R, Ohshima H.
Clin Implant Dent Relat Res. 2015 Jul 1. doi: 10.1111/cid.12365. [Epub ahead of print]
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l  Variation in arterial supply to the floor of the mouth and assessment of relative hemorrhage risk in implant surgery.
Katsumi Y, Tanaka R, Hayashi T, Koga T, Takagi R, Ohshima H.
Clin Oral Implants Res. 2013 Apr;24(4):434-40. doi: 10.1111/j.1600-0501.2011.02348.x. Epub 2011 Oct 20.
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2.      上歯槽神経・脈管の走向に関する肉眼解剖学研究

【成果と研究内容】

l  The Relationships of the Maxillary Sinus With the Superior Alveolar Nerves and Vessels as Demonstrated by Cone-Beam CT Combined With μ-CT and Histological Analyses.
Kasahara N, Morita W, Tanaka R, Hayashi T, Kenmotsu S, Ohshima H.
Anat Rec (Hoboken). 2016 May;299(5):669-78. doi: 10.1002/ar.23327. Epub 2016 Mar 4.
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l  上歯槽神経・脈管の走向の観察の概要

前・中・後上歯槽神経は上顎神経の枝であり、上顎骨内を走行し、頬粘膜、上顎洞粘膜、上顎歯列の歯肉、歯根膜、歯髄に分布することが知られている。CT画像上では前上歯槽神経を取り囲む管状構造が上顎骨前歯部に認められ、その内部の神経・脈管構造の存在が報告されているが、中・後上歯槽神経との関係については不明であった。最近我々は、上歯槽神経・脈管が走行する歯槽管の構造をCT画像で検索し、前・中・後上歯槽管が1本の歯槽管に収束することを明らかにした(Kasahara et al. Anat Rec (Hoboken). 2016 Feb 13. doi: 10.1002/ar.23327.)が、その出現率や収束した歯槽管内の神経・脈管構造と残存歯との関係は不明である。上顎の支配神経の一つである鼻口蓋神経を取り囲む鼻口蓋管はインプラントを含む上顎骨を対象とした外科手術で注意が払われることが多いが、上歯槽神経に対するリスクはあまり考慮されていないのが現状である。Le FortT型骨切り術やサイナスリフト等の顎骨手術において、術中の出血、術後の知覚鈍麻や知覚異常を予防する上で、上顎の神経・脈管構造の三次元的理解は医学的なリスク管理の観点においてきわめて重要である。本研究の目的は、CT画像上で上歯槽管の走向を確認し、その中を走行する前・中・後上歯槽神経・脈管との関係、さらには神経・脈管構造と残存歯との関係を明らかにすることである。

 

 本研究について、ご質問あるいはご同意できない等ございましたら、下記までご連絡をお願いいたします。

 

問い合わせ先:新潟大学・医歯学系・教授・大島勇人(おおしまはやと)

                            TEL025-227-2812

                            FAX025-227-0804

                            E-mailhistoman@dent.niigata-u.ac.jp