シンポジウム報告

平成19年11月23日(金)に新潟大学歯学部講堂において、新潟大学特色GPシンポジウム「学生主体の三位一体新歯学教育課程〜社会に貢献する包括的歯科医師の育成を目指して〜」を開催しました。本シンポジウムのテーマは「歯学における技能教育のあり方」とし、東京医科歯科大学、日本歯科大学、徳島大学歯学部、新潟大学歯学部それぞれにおける特色ある技能教育についてご講演を頂いた後、討論を行ないました。当日の参加者は59名で、その内訳は大学関係54名、民間企業4名、一般1名でした。

歯学教育の分野では、少子・高齢社会の進展による疾病構造の変化、患者や学生のニーズの高度化・多様化、生命科学の急速な発展、教育内容の国際標準化、さらには卒後臨床研修の必修化に伴い、卒前教育の役割を整理して、卒後教育や生涯教育との円滑な接続を考慮することの必要性が指摘され、その在り方についてさまざまな見直しが進められています。過密な記憶偏重教育はもはや過去のものとなりつつあり、学生が自ら課題を設定し解決する能動的な学習により、歯科医師に求められる知識・技能・態度をバランスよく身につける学習者中心の教育が注目を集めています。今回のシンポジウムでは、昨年度の知識に続いて、特に技能の修得に的を絞り、歯学教育における技能教育のあり方について、その効果を評価し、問題点と改善策を探りました。

シンポジウムは本学医歯学系教授大内章嗣の司会により進められました。まず、新潟大学歯学部長前田健康より開会の挨拶があり、続いて本学新歯学教育課程の現状が紹介されました。各大学の技能教育への取り組み紹介は以下の通りでした。東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター荒木孝二教授には「歯学における技能教育のあり方−東京医科歯科大学歯学部の取り組み−」、徳島大学医学部・歯学部附属病院総合歯科診療部河野文昭教授には「徳島大学歯学部における卒前・卒後臨床教育の現状と課題」、日本歯科大学附属病院小児・矯正歯科宮下渉先生には「日本歯科大学附属病院における医療人GPへの取り組み」についてそれぞれ詳しくお話しいただき、新潟大学医歯学総合病院歯科総合診療部教授魚島勝美が「新潟大学歯学部における新しい模型実習の試み」についてお話しました。


新潟大学 前田健康先生

講演の様子

左から東京医科歯科大学 荒木孝二先生、徳島大学 河野文昭先生、
日本歯科大学 宮下渉先生、新潟大学 魚島勝美先生

その後のパネルディスカッションではコーディネーターの新潟大学医歯学系教授小野和宏と同准教授富塚健の司会により、出席者を交えた活発な討論がなされました。とりわけ臨床実習の問題点やその難しさについては多くの意見が交わされ、出席者からももう少し討論の時間があれば良かったというご意見も頂きました。また、歯学部の教育目標が歯科医療の基本の習得であるという再認識と、そこに占める技能の位置付けについても確認されたと思っています。本シンポジウムの結果、参加者の歯学教育における技能教育の重要性のみならず、各大学の現状と課題が明確になったという点で非常に意義深いものとなりました。


パネルディスカッションの様子

シンポジウム終了後の参加者アンケートの結果、良いシンポジウムであったとの回答が85%で、またこのようなシンポジウムが開催された場合には出席したいという意見が96%に達しています。一方、本シンポジウムの存在を知った媒体は学内の掲示ポスターが58%を占め、文部科学省や本学のホームページは10%に過ぎませんでした。今後多くの参加者を得て討論の幅をより広げ、教育の改善をより推進するためには、このようなシンポジウム開催の周知方法に関しては課題が残ったと言えます。

一方、自由記載のご意見もたくさん頂きました。一般の参加者からは、「理解しやすかった、今後このような活動を拡大して欲しい」とのご意見や「大学間の違いや臨床実習の重要性が良く理解できたので定期的に開催しても良いのでは?」などのご意見を頂きました。また、大学関係者からも、技能教育という観点からOSCE見直しの必要性や、他大学の現状を理解するための良い機会であるとのご意見を頂きました。今後の改善が望まれる事項としては、スキルラボの充実、各分野による実習の連携、スタッフ教育の必要性、評価基準の明確化が挙げられました。

以上のご意見を踏まえ、今後は本プログラムの実効性を高めるために、本学での実習の縦横の連携を深める努力をする一方、教育の評価に関してもより明確で学習の現実を反映するものとなるように検討を進めて参ります。来年度には本プログラムの総括的なまとめのためのシンポジウム開催を予定していますが、より多くの大学の実情とご意見を反映し、歯学教育の充実を目指した意義ある討論をすることを目標としています。さらに、開催に関する周知方法も工夫し、より多くの参加者が得られる努力を致しますのでよろしくお願い致します。

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