実施事業

実施報告

International Symposium on Oral Health Education and Research

所属
大学院医歯学総合研究科生体歯科補綴学分野2年
氏名
野澤 恩美

2011年12月10日~11日にインドネシア バリクパパンにて開催されたInternational symposium on oral health education and researchに参加し、口演発表を行ったので報告する。

このシンポジウムは新潟大学歯学部とインドネシア大学歯学部の共同で開催され、発表者は新潟大学をはじめ、徳島大学、インドネシアからインドネシア大学、ガジャマダ大学、台湾からYang Min大学、タイからKhon Kean大学、Chiang Mai大学、タマサート大学、その他各国が参加した。このシンポジウムの大きな特徴はアジアの多くの国から参加者がいたこともさることながら、参加者・発表者の専門が多彩なことにある。予防歯科、補綴、保存、小児歯科、生理学、解剖学その他といった多彩な専門家がそれぞれの分野の発表を行い、さらには各国の学部学生が交換プログラムの成果の発表を行った。

今回私はResearch Update SessionでPhysiolosical importance of HSP27 expression in Osteoblastic cellsというタイトルで研究成果の発表を行う機会を得た。インプラントの前処置で行われる骨増成はインプラントの適応症を広げ、インプラント成功率向上に寄与している。新潟大学付属病院では適切なScaffoldとともに患者から採取した骨膜を培養し移植する細胞療法が行われている。しかしながら移植された細胞は移植時のストレス等の影響でアポトーシスすることが報告されており、このことが効果的な骨増成を制限していることが予想される。HSP27(Heat shock protein27)は熱、化学、機械的刺激等のストレスにより発現されるストレスタンパク質の一つで分子シャペロンとしての機能を持つことが知られている。HSP27は抗アポトーシス作用を持つことが知られており、我々はこの抗アポトーシス作用に着目した。HSP27を細胞に過剰発現させることで細胞にストレス耐性を獲得させ、移植細胞の生存率を向上させることで効果的な骨増成が期待できるのではないかという着想にいたった。そこで今回我々は骨芽細胞にHSP27を遺伝子導入し、TNF-αにてアポトーシスを誘導した際の細胞の生存率を確認した。また、分子シャペロンとして骨芽細胞の分化に影響している可能性も評価した。その結果、HSP27過剰発現細胞は部分的にTNF-αによって誘導されるアポトーシスが抑制されることを確認した。また、骨芽細胞の分化過程で石灰化の直前でHSP27の遺伝子発現の上昇が認められたため、HSP27が骨芽細胞の分化に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。

このような海外シンポジウムで発表の機会を得られたことは、私にとって非常に有意義な経験となった。英語での発表、質疑応答という経験が出来たことは大学院生として幸運なことで、今後の研究発表、英語習得のモチベーションとなった。また、多彩な専門分野から集まった研究者と意見交換が出来たことは通常の自身の分野の学会では得ることが出来ない意見をいただくことができ、違った視点で研究を見直すことが出来た。普段聞くことが出来ない他分野の発表を聞くことで歯科全体の知識をさらに深めることが出来たようにも思う。

このような機会を与えていただいたことに感謝するとともに、今後ともこの経験を生かすことが出来るように研鑽を積んでいきたいと思う。

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