今後の計画

はじめに

新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命系では歯学研究科の時代よりアジアを中心に多くの留学生を受け入れてきました。その教育にあっては、それぞれの母国に帰国した後の彼らの研究環境まで考慮することは無く、当然のごとく最新の研究設備を駆使した最前線の研究テーマを取り上げてきました。しかし、発展途上国を視察した結果、日本で学んだ研究手法を活用するだけの研究環境は整備されておらず、日本での学位取得が必ずしも彼らのキャリア形成に役立っているとはいえない状況を目の当たりにしました。すなわち、日本の経済援助は「箱ものの援助が多く、当事国の実情にあった援助になっていない」という批判がある中、大学人にも留学生の教育では同じ間違いをおかしてきたのかもしれません。

そこで大学院教育の実質化が求められる時代にあって、歯学研究を推進する口腔生命系ではアジア地域社会への貢献および留学生の出身国の実情に対応した人材育成が必要との観点から「国際口腔生命コース」の設置を立案するに至りました。このコースでは4年の修業年限のうち初年度を新潟大学で教育し、その後母国にてe-Learningで単位を取得すると同時に、新潟大学で教育を受け帰国した拠点校教員による指導を受けて学位論文を完成するというものです。

このプロジェクトは平成17年度の魅力ある大学院教育イニシアティブに「留学生大学院教育の実質化による国際貢献」として採択されました。この2年間、スリランカのペラデニア大学と協議して拠点校としての協定を結び、新潟での留学生教育実施まで順調に進んでいます。大学院教育イニシアティブの実施年限は2年間ですが、これから留学生は帰国し、拠点校での教育が開始されます。スリランカの教員とも十分な協議を行い、少ない予算ではあっても研究に必要な資材を両大学で十分検討する過程を経て、本プロジェクトが単に箱ものや機器の援助でないことを理解していただけました。留学生大学院教育の実質化による国際貢献という観点からすると、少ない予算で、その目的を十分達成できたと考えております。しかし、すべて順調に運んだわけではありません。本プロジェクトを実施するに当たり、留学生の渡航費・生活費は補助の対象になっていないため、留学生の受入数には自ずと制約が出ています。今後、国費外国人留学生の枠に本プロジェクトの成果を活用できるようにしていただければ、効果的な国際貢献ができるものと信じております。

最後になりましたが、留学生の生活費を支弁するため教員の努力だけではとてもまかないきれず、新潟県歯科医師会、三重県歯科医師会、新潟大学歯学部同窓会、さらには(株)モリタ、亀田製菓(株)、(株)栗山米菓、(株)ジーシー、グラクソ・スミスクライン(株)より寄付をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

新潟大学大学院医歯学総合研究科・口腔生命科学専攻 山田 好秋

ページの先頭へ戻る