実施報告

平成19年度における国際口腔生命科学コースの活動報告

平成17年度「魅力ある大学院教育イニシアチブ」に採択された「留学生大学院教育の実質化による大学院教育」は文部科学省より2年間の補助を受け事業を推進してきた。平成19年度からは新潟大学からの援助を受けて継続的に事業を進めている。平成19年度の事業としては、6月にジャカルタにあるインドネシア大学での国際口腔生命科学コースの協定締結と入学希望者に対する入学試験の実施、10月にインドネシア大学からの本コースへの留学生の入学、そして、11月には、国際口腔生命科学コースの2年次生として研究を続けているNandasena氏の指導にスリランカ・ペラデニア大学へ歯学部教員を派遣した。

1.インドネシア大学での国際口腔生命科学コースの協定締結および入学試験の実施


(A)協定締結交渉に先立ち、前田歯学部長から国際口腔生命科学コース設置の意義について説明。

2007年6月、前田歯学部長、予防歯科学分野宮崎教授、歯科矯正学分野齋藤教授、事務方から渡邉学務課長および酒井学務担当がインドネシア大学を訪問した。訪問の目的は、インドネシア大学と国際口腔生命科学コースの協定締結ならびに同大学から本コースでの履修を希望している者の入学試験行うことであった。


(B)齋藤教授による国際口腔生命科学コースの概要ならびに、これまでの取り組みについての紹介。


(C)取り組みについての説明後、インドネシア大学 Angky歯学部長らと協定締結後の事業計画について意見交換。


(D)協定書への調印後に記念撮影。
新潟大学側5名(前田歯学部長、宮崎教授、齋藤教授、渡邉学務課長、酒井学務担当)、インドネシア大学関係者がAngky歯学部長ほか2名。

6月27日、ジャカルタ中心部にあるインドネシア大学歯学部へ到着。国際口腔生命科学コースに関する協定締結に先立ち、インドネシア大学歯学部長Dr. Angkyをはじめ教育担当副学部長らに対し、前田歯学部長からご挨拶を兼ねて国際口腔生命科学コース設置の背景と意義について説明があった(A)。続いて、齋藤教授から国際口腔生命科学コース設置の概要と設置されて以降これまでに行ってきた活動内容について報告がなされた(B)。本コースは留学生の経済的負担軽減に配慮したもので、日本で1年間履修した後、出身大学に戻り残り3年間は新潟大学からの短期教員派遣あるいはe-Learningの活用で必要単位を修得し、国際ジャーナルへの学位論文提出を前提として指導していくことになっている旨説明した。協定締結後の事業計画の具体案について意見交換し(C)、コースの発展のため相互に協力していくことを確認した後、無事協定締結に至った(D)。協定締結後、国際口腔生命科学コースへの入学を希望していた1名の者(Bramma氏)について、早速面接試験を実施することとした。面接試験は、前田教授、宮崎教授、齋藤教授の3名により行い、一般教養、歯学領域の学力、語学力、学習意欲などについて試問した。最終判定は帰国後の教授会での審議、承認が必要であるが、面接の結果、学力、履修意欲とも本コースで履修するに足る留学生として十分な能力を有しているとの意見で一致した。帰国後、面接試験の結果をもとに教授会で審議し、正式に入学が許可された。Bramma氏は、顎顔面領域のCTの活用および歯科疾患の疫学調査について興味を持っていたことから、予防歯科学分野所属の大学院留学生として履修させることとし、平成19年10月より履修を開始している。


(E)施設調査の一環として、学部教育施設を見学。写真は、PBLチュートリアルを行う部屋。授業はインドネシア語で行われているが、成績最上位のグループのみ英語により行っているとのことだった。


(F)歯学部病院も見学。写真は最近新しくなった臨床実習を行う診療室。

面接試験終了後、歯学部講義棟および歯学部病院を視察した。インドネシア大学歯学部では、新潟大学歯学部でも学生教育の一部で取り入れている問題発見解決型学習(PBL)を主体として教育がなされ(E)、成績最上位クラスではすべて英語で教育がなされているとのことであった。また、学生が診療する総合診療部は最近改装したとのことで、ユニットも新しいものがそろっていた(F)。治療ユニットはコスト削減のために、パーツを日本はじめ海外から輸入し国内で組み立てて販売しているものを購入したとのことであった。

インドネシア大学歯学部は5年制で、入学定員が80-90名、倍率は300倍にも達するとのことで、学生の男女比は1 : 9と圧倒的に女子学生が多数を占めていた。また、創立後45年が経過し新潟大学よりも歴史ある大学だったが、教員のポストは少なく教授総数は9名とのことであった。


(G)インドネシア大学の本部にある本部管理棟。歯学部からは離れた場所にある。
他の学部棟は本部敷地内に設置されていた。

歯科病院見学後、車で40分ほどのところにある本部キャンパスも視察した。インドネシアで最も歴史ある大学に相応しく広大なキャンパスを有し、大学本部ビルも大変堅固な作りであった(G)。キャンパス内には医学部、歯学部以外の学部が設置され、いずれ歯学部も医学部も中心部から本部キャンパスに移転する予定とのことであったが、予定している2年後の完成となるか否かは国の経済状況に左右されるとの説明であった。

2.ペラデニア大学での研究・指導方法の確認


山田教授による筋電計・ポリグラフの指導

2007年10月、前田健康歯学部長、口腔生理学分野山田好秋教授、口腔解剖学分野井上佳世子准教授,小池裕磨事務職員がスリランカ・ペラデニア大学を訪問した。

訪問の主目的は国際口腔生命科学コース2年生のNandasena氏の指導、ペラデニア大学歯学部での学生・教員への講義などであった。

10月5日にコロンボに到着し、翌朝ペラデニア大学のあるキャンディに向け出発した。

10月8日にはペラデニア大学の教員との懇談会が設けられ、ペラデニア大学歯学部長 Amaratunga氏の挨拶のあと、前田歯学部長より本プロジェクトの説明と今後の予定等が紹介され、国際口腔生命科学コースの継続が確認された。

その後,本コース2年次に在学しているNandasena氏の指導教員でもある前田歯学部長と井上准教授によるNandasena氏への直接指導と、山田好秋教授による研究機器(筋電計・ポリグラフ)の使用方法の指導が生理学分野の教員(新潟大学大学院歯学研究科で学位を取得したAmarasena氏とSajjiv氏)に行われた。なお,最近届いた報告によると,筋電計は学部教育にも活用されているとのことである。


授業で活用されている筋電計・ポリグラフ

10月9日にはペラデニア大学事実上のトップである副学長 Abeygunawardena氏とペラデニア大学歯学部長 Amaratunga氏、前歯学部長 Wijeyeweera氏と懇談し、大学間協定の可能性について照会があった。Abeygunawardena氏は新潟大学歯学部との交流を見て、是非全学的な交流に発展させたいと強く望んでいた。この件に関しては持ち帰り、後日大学本部へ報告することを約束した。


副学長室で今後の交流事業について打合せを行った。

その後,前田健康歯学部長による講義(Multiple neurotrophins involved development / regeneration of the periodontal Ruffini endings)と、山田好秋教授による講義(Mastication and Swallowing)が学部学生と教員、そして近隣の歯科医師を対象に行われた。

これまで日本からはこのプロジェクトのために4回訪問し、ペラデニア大学から学部長等を3回招聘し密接な学部間交流を展開してきた。その成果は如実に表れ、新潟大学で学位を取得したAmarasena氏が基礎講座の主任に任命されていることが分かった。今後は、このプログラムを継続することで新潟大学のスリランカのトップ大学であるペラデニア大学での重要性を高め、国際交流の実質化を果たして行きたい。

3.留学生の受け入れ

本プログラムによる第2期留学生については、募集要項公開した結果、インドネシア大学から1名の入学希望者があったため、新潟大学教員3名が現地に赴き、履歴書、成績証明書の確認後、口頭試問による語学力ならびに修学への意欲などについて試験を行いました。試験の結果、履修するに足る能力を有すると判断されたことから合格と判定し、平成19年10月より予防歯科学分野(宮崎秀夫教授)において新潟大学での履修を開始しました。

第2期留学生ブランマさん
研究テーマにしたがったデータ解析技術をトレーニングしている。
インドネシア大学からの第2期留学生ブランマさん。

4.国際口腔生命科学コース在籍学生の履修状況

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