波長分散型X線マイクロアナライザーにより生体組織切片の元素分布を得る試料作製法


小林正義, 渡辺孝一*, 宮川 修*
新潟大学分析センターX線マイクロアナライザー室
(室長:渡辺孝一 助教授)
*新潟大学歯学部歯科理工学講座
(主任:宮川 修 教授)


抄録:
 X線マイクロアナライザー(以下EPMAと記す)は微小部分の元素分析では不可欠の装置で,材料研究で広く使用されている.しかしながら電子線を非常に細く絞って試料に照射するため,分析する部位が高温となり,従来は金属やセラミックスなどの耐熱性の試料に適用が限られてきた.生体組織切片は非常に熱に弱く,しかもそこに含まれている元素は一般に極めて低濃度のため,EPMAによる元素分析は非常に困難と考えられてきた.
 カーボンブロックを鏡面になるまで研磨し試料台とすること,および切片厚さを最適にすることで,生体組織切片でありながら,熱によるダメージを回避できた.この結果,強い電子線によるEPMA分析を可能にし,低濃度元素の二次元分布も観察できるようになった.この応用として,原発性胆汁性肝硬変における銅の肝組織および細胞内分布の検出に用い,染色法により検出された銅の分布と比較した場合,病理組織学的に利用価値の高いことが確認され,本研究で開発された試料作製法が極めて有用であることが分かった.


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