磁気センサーを応用した二次元下顎位測定装置の試作


平野秀利,河野正司,山田好秋*,杉本浩志
新潟大学歯学部歯科補綴学第一教室
(主任:河野正司教授)
*新潟大学歯学部口腔生理学教室
(主任:山田好秋教授)


抄録:
 咬合が崩壊した患者を治療するには,咬頭嵌合位を設定するにあたって,咬合高径を記録,診断することが不可欠である。この測定には,従来ノギスを用いた方法によっているが,経時的に正確な測定を行うことは困難であった。本研究では,磁気センサーを応用することにより,下顎位を二次元で経時的に測定することが可能な,小型軽量な電気的測定装置を開発し,装置の特性,および臨床的操作に際して生じる誤差要因を検討した。
 装置は,下顎に磁石を設置し,これより40mm離して鼻部に2ヶのセンサーユニットを,前頭部に補正用のセンサーを設置した。センサーユニットからの出力をキャリブレーションし,得られた出力曲線を直線近似式で補正した。また,1.センサーの温度特性,2.回路の温度特性およびドリフト,3.センサー出力の直線性の改善,4.頭部動揺および地磁気の影響,の4項目に対しても補正を加え,センサーと磁石の間隔が30mm〜50mmの範囲で,3〜5%内の誤差で直線性を保って測定可能となった。
 健常者に対する測定では,磁石を前歯歯頚部粘膜に固定することにより,咬頭嵌合位,安静位における顎間関係を,臨床に必要な精度で測定できることが明らかとなった。


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