歯のガイドの修正による習慣性顎関節脱臼の治療例


澤田宏二,荒井良明,メディナ・ラウル,河野正司,福井忠雄*,花田晃治*
新潟大学歯学部歯科補綴学第一講座(主任:河野正司教樹)
*新潟大学歯学部歯科矯正学講座(主任:花田晃治教樹)


抄録:
 習慣性顎関節脱臼の治療には,非観血的な保存療法は奏効しないとされ,口腔外科領域での観血的処置が行われることが多い.しかし,著者らは顎関節脱臼症例に対して,歯のガイドの位置を変化させる咬合治療により顎関節脱臼の治癒をみた.症例は起床時の右側顎関節習慣性脱臼を有する18歳男性である.患者は側方滑走運動時に第二大臼歯のみが歯牙接触していた.スタビリゼーションスプリントを上顎歯列に装着したところ,翌日から起床時の右側顎関節脱臼は消失した.その後,作業側ガイドと非作業側ガイドのどちらが脱臼の 消失に寄与しているのかを追求し,さらに6自由度顎運動測定装置(東京歯材社製 TRIMET )により,二種類の滑走接触における顎運動の解析を行った.その結果,脱臼側の歯のガイドを歯列の前方歯に修正することによって,下顎頭の異常運動が改善され,右側顎関節脱臼は消失した.今回の症例より,習慣性顎関節脱臼症例にアンテリアル・ガイダンスの修正が有効な治療法となりうることが示唆された.


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