口腔細胞診の病理検査としての意義:
臨床統計的検討


鈴木 誠,1)2) 朔 敬2)
1)新潟大学歯学部附属病院臨床検査室 (室長: 中島民雄教授)
2)新潟大学歯学部口腔病理学講座 (主任: 朔 敬教授)


抄録:
 新潟大学歯学部附属病院で1990年から1995年までの6年間に行われた細胞診検査863件の結果を解析し、細胞診の有用性と検査上の問題点を検討した。細胞診検査の対象となったのは主として臨床的に腫瘍が疑われる患者で、その初診段階の診断や、治療経過中および予後の診査のために細胞診が行われた。
 細胞診と組織診が併用された305例について、良悪性の判定のための鋭敏性は74.8%、特異性は79.8%であり、全体の正診率は63.6%であった。偽陰性率は34.8%、偽陽性率は13.8%であり、これらを生じる理由として不適切な検体採取が注目された。したがって、検体採取から標本固定までの段階の処理を注意深く行うことにより、とくに偽陰性の頻度は減少させることができると考えられた。パパニコロウ分類クラスIIIと判定された症例には組織学的には各種の病変が含まれていた。しかし、クラスIIIは本来、真の意味の良悪性境界病変と考えられる細胞変化に限って用いられるべきものであり、それ以外の要因により判定困難な場合はクラス判定は避けたほうがよいと考えられた。したがって、細胞診の所見から特定の組織学的診断名が確定される場合には組織学的診断名を用いて表現することを提案した。


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