一原著一

部分床義歯装着による鉤歯の動揺度の変化
伊藤   淳,河野 正司,岩片 信吾*
新潟大学歯学部歯科補綴学第一講座
(主任:河野 正司 教授)
*新潟大学歯学部附属病院特殊歯科総合治療部
(部長:河野 正司 教授)


抄録: 部分床義歯装着後の鉤歯の動揺度の経時的変化を明らかにするために,新たに製作した義歯の鉤歯の動揺度変化を分析した。被験者は新潟大学歯学部附属病院第1補綴科において平成6年8月から平成7年3月までの期間に部分床義歯を製作した患者の中から選択したボランティア22名(男性6名,女性16名,平均年齢58.4歳)である。動揺度の評価にはペリオテストを用い,鉤歯59本について義歯装着時および義歯装着後1週,2週,1カ月,3カ月,6カ月,12カ月,18カ月の各時期に測定を行った。
 (1)全鉤歯のPT値変化,(2)上顎歯と下顎歯のPT値変化の比較,(3)装着時のPT値と装着後のPT値変化との関係,(4)歯の欠損の状態とPT値変化との関係,(5)維持装置の種類とPT値変化との関係の各項目について分析を行った結果,以下の結論が得られた。
1.部分床義歯装着後の全鉤歯のPT値の平均値には,装着時と比較して差が認められなかった。
2.上顎義歯の鉤歯のPT値の装着後の平均値には,装着時と比較して差が認められなかった。一方,下顎義歯の鉤歯のPT値の装着後の平均値は,装着時と比較して有意に減少した。
3.装着時のPT値が10以上20未満の鉤歯は,10未満の鉤歯よりも装着後のPT値変化が大きかった。
4.クラスプ形態,維持装置の設置部位による差は認められなかった。
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