(1)摂食介護
食事の体位は頚部前屈位30度仰臥した姿勢をとり、食後の胃食道逆流を防ぐために食後2時間程度座位を保つようにします。食品の性状はとろみをつけるなどの工夫をする必要があります。
(2)口腔ケア
肺炎の成立因子である口腔内の細菌のコントロールという意味では口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防に最も重要と思われます。口腔細菌数、特に咽頭細菌数を減少させることが必要とされています。口腔細菌数を減少させるには、プラークコントロールが重要となります。
従来は咽頭部の消毒が主たる方法とされてきましたが、有歯顎者や義歯装着者の場合には、歯および義歯の清掃にも十分な配慮が必要です。有歯顎者の場合には歯肉縁上だけでなく歯肉縁下のプラークコントロールも必要です。老人ホームなどでは口腔ケアが徹底されていないことも多く、行われていても消毒剤による洗口あるいは清拭が主な方法のようです。デンタルプラークは典型的なバイオフィルムであるため、個人的に行うブラッシングのみでは完全に除去することが不可能です。ましてや、要介護者においては専門家による口腔ケアが必要となります。バイオフィルムは機械的な方法いわゆるPMTC(プロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング)を用いない限り、化学的な方法のみでの除去は不可能です。この場合には、歯科医、歯科衛生士の果たすべき役割は大きいと言えます。
(3)薬物療法
ドーパミン補充療法、サブスタンスPを上昇させるためにカプサイシンを少量口腔内に入れる方法、アンギオテンシン変換酵素阻害剤を用いる方法などを応用することにより、誤嚥防御反射を正常化できる可能性が出できています。
病院でも家庭でも、高齢者が倒れると看護婦や介護者は食事や排泄に追われ、口の中まで目が行き届きません。残念ながら看護や介護の教育の中で、口腔ケアがそれほど重要視されてきませんでした。高齢者だけでなく、若年者でもICUに入り、抵抗力が落ちているときは注意深い口腔ケアが求められます。このことを知って行動するだけでも、誤嚥性肺炎をはじめとする呼吸器疾患を予防することができます。
[地域保健部 副実行委員長 荒井 節男] |