ADCT灌流(かんりゅう)画像検査を受ける患者さんへ(臨床研究に関する情報)


当院(新潟大学医歯学総合病院)では、口腔癌の頸部リンパ節転移の早期発見に有用な新しい画像診断法を確立するために、以下の臨床試験を行なっており、できるだけ多くの患者さんに協力をお願いしています。

[研究課題名]
ADCT灌流画像による頸部転移リンパ節の早期診断

[研究機関]
新潟大学大学院医歯学総合研究科・顎顔面放射線学分野
新潟大学医歯学総合病院 歯科放射線科

[主任研究者]
新潟大学医歯学総合研究科顎顔面放射線学分野 教授 林 孝文(はやし たかふみ)

[はじめに]
CT灌流(かんりゅう)画像とは、通常の静脈注射で造影剤を流して撮影するCT検査の際に、診断に重要な場所を重点的に、造影剤を通常よりも少し早い速度で流しながらの連続撮影を追加することで、通常であればわかりづらい病巣を検出する方法です。
現在、脳梗塞の診断に広く使われていますが、最近になり、頸部リンパ節転移の診断においてもその有効性が報告されるようになってきました。
この検査は現時点では必須の検査ではありません。
この検査の実施は、リンパ節の早期診断に役立つかどうかを見定めるための研究目的のものです。
この臨床試験に参加されるのはあなたの自由です。
十分ご検討の上、参加されるかどうかをお決め下さい。
この臨床試験への参加をお断りになっても、参加された後に途中でおやめになることも全く自由です。
その場合でもなんら不利益を被ることはありません。

[検査の目的と方法、費用負担]
口腔癌では、口の癌の治療を行った段階では見つからなかった頸部リンパ節への転移が、数か月から数年後に出現することがあります。
これを後発転移といい、口の癌を治療した段階ですでにそのリンパ節に腫瘍細胞が転移していたことによるもので、約3割の頻度でみられます。
画像診断は転移リンパ節の診断に役立ちますが、画像でみえないほど小さな腫瘍細胞は、残念ながら見つけることはできません。
ただし、この腫瘍細胞が増殖して画像で見つけられる程度の大きさになるまで待っても治療成績に差がないことがわかっているので、経過観察をしてしだいに変化していく様子を細かく追跡することで、これを発見することはできます。
しかし、壊死などのはっきりとしたサインを出してくれる転移リンパ節であれば早い段階で見つけられますが、腫瘍細胞の性格は多彩で、正常なリンパ節の組織にまぎれて増殖するタイプもあり、その場合にはこれまでの画像診断法では発見が遅れて治療が大がかりになることがしばしばありました。
こうした従来の検査ですり抜けてしまうタイプの転移リンパ節を早期診断するための対策のひとつとして、本診療室ではCT灌流画像の応用を試みることになり、その有効性について臨床試験をさせていただくこととなりました。
CT灌流画像検査は、造影CT検査の際、通常の範囲の撮影直後にそのまま引き続いて行います。
このため、検査回数が増えることはありません。
使用する造影剤の種類や量は変わりませんので、検査費用は通常の造影CTと変わらず、保険診療が適用されますので、医療費の自己負担分を負担していただくことになります。

[検査の利点と欠点、副作用・合併症ならびに対処方法]
利点:通常の造影CT検査と変わらない撮影負担と費用で、通常の造影CTやエコー検査ではわからないような転移リンパ節を早期発見できる可能性があります。
欠点:転移の疑われるリンパ節の領域の範囲に限り、通常よりも多く被曝をすることになります。
ただし、被曝線量は診断に有効な画像が得られる最小限に設定します。
もし転移リンパ節が出現した場合には頸部リンパ節の手術(頸部郭清術)の適応となり、その後の放射線治療も行われる可能性もありますので、その場合の被曝線量と比較するときわめて少ないものといえます。利点と欠点のバランスをお考えになり、お決めください。
副作用・合併症:通常の造影CTと同様の、造影剤による副作用(急性・遅発性)の可能性があります。
軽微なものとしては、くしゃみや気分が悪くなるといった過敏反応といわれるものから、重篤なものではごくまれにショックが生じることがあります。
本研究では、副作用に対する十分な対策をとった上で行ないます。
本院では、過去に造影CT検査による重篤な副作用は発生していません。
また、副作用の危険性の高い、以下にあてはまる方にはCT灌流画像検査は行ないません。
[血清クレアチニン1.5以上、ヨード過敏症またはヨード造影剤の過敏症歴、重度の甲状腺疾患、気管支喘息、重篤な肝・心・腎障害、マクログロブリン血症、テタニー、褐色細胞腫またはその疑い、急性膵炎、多発性骨髄腫、授乳婦]

[代替となる他の検査法]
当診療室では、定期的な超音波検査による経過観察(おおよそ1か月に1回の頻度)を行っており、CT灌流画像を受けられなくても現状の水準での転移リンパ節の早期発見は期待できます。

[参加いただけない場合の不利益]
この検査を受けられるかどうかは、患者さんの自由意志でお決めになってください。
この検査を受けなかった場合でも、不利益を受けることはありません。

[同意書の撤回]
一度この検査を受けることに同意された後に、いつでも同意を撤回することができます。
その場合でもあなたが不利益を受けることは一切ありません。

[プライバシー(個人情報)の保護について]
あなたのプライバシーを十分尊重し、細心の注意の下で試験を進めます。
また、あなたを含む多くの患者さんから得られた貴重なデータは匿名化された後に学術論文等に発表される場合がありますが、あなたの名前が外部に漏れるようなことはありません。

[補償について]
万一、この治療を受けて患者さんに不利益が生じた場合は、責任をもって迅速かつ適切な治療をさせいただきます。
この場合、これらの治療に関わる費用については、あなたの健康保険を用いて対応させていただきます。

[この検査に関する質問などについて]
この検査についての不安な点や分からないことがありましたら、下記の担当歯科医師にいつでも遠慮なさらずにお尋ねください。

[研究終了予定日]
平成29年3月31日

[問い合わせ先]
951-8514 新潟県新潟市中央区学校町通2-5274
新潟大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面放射線学分野
担当歯科医師 林 孝文(はやし たかふみ)
電話 025-227-2914
FAX  025-227-0810


Last updated at March 1, 2016
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本ページに関する問い合わせ先:林 孝文(hayashi@dent.niigata-u.ac.jp)