2018年 第5回 海外医療支援活動報告


新潟大学歯学部からヤンゴン歯科大学へ
口唇裂・口蓋裂を中心とする口腔外科手術に関する医療支援


 「口唇裂・口蓋裂を中心とする口腔外科手術に関する医療支援」は今年で5回目を迎え、2018年12月17日に成田空港を出発し、 支援活動の役目を終え23日に帰国しました。今年度は、前田歯学部長、顎顔面口腔外科学分野から高木教授、児玉講師、永井(筆者)、 歯科麻酔学分野から瀬尾教授、岸本准教授が参加しました。さらに今年度は新潟大学歯学部の留学生交流支援事業(SSSV)の一環として 2人の学生(相澤、小野)を加えた計8名での出発となり、過去で最も大所帯での出国となりました(写真1)。医療支援物資の出国検査も今回で5回目という事で、 何事もなく通過できるかと思っていた矢先、特定物資の封入を各段ボールに分散させる必要があるため、全ての荷物を再度開封し封入し直す作業を、 全員で行うという珍事があり、メンバー全員の結束力が試される医療支援になる事を予感しました(写真2)。その後準備を終え、定刻通り出発し、 ヤンゴン空港に到着するとヤンゴン歯科大学のレペタン(LPT)先生と合流し宿泊先(スーパーホテル)へ移動する事となりました。 ホテル内に付随する朝食会場兼関西風居酒屋(しゃかりき432”)を観た際、翌日からの医療支援における我々のオアシスとなる事は容易に想像できました。





ミャンマーの経済発展

 ヤンゴン空港に到着した際の率直な感想として、私が2年前訪れた時よりも空港が拡張し、施設や道路などの整備が急速に進んでいる印象を受けました。ミャンマーは、過去の政権(当時、ビルマ)による鎖国的な経済体制により、他のアジア諸国から大きな差がついていた国内環境から一転し、2016年3月ミャンマー新政権が発足。アウン・サン・スー・チー氏が国家元首に就任し、同年10月にはアメリカからの経済制裁が解除されました。同時期が、2年前の第3回医療支援のタイミングであり、我々の支援活動はまさにミャンマー経済発展の過渡期を担うものである事を自覚させられました。




ヤンゴンスタッフと1年ぶりの再会・術前診察

 翌朝、ホテルからヤンゴン大学歯学部に車で移動し、すでに顔なじみとなったWin Naingoo教授、Tun Ngwe准教授をはじめ、 病院スタッフと1年ぶりの再会の挨拶を済ませた後、公募によって集まった19名の手術予定患者の診察準備に取り掛かりました(写真3)。 各患者の全身状態、病態、検査データを確認し、術前診察を行い、カンファレンスの後に日本チームが施術する9症例が決定しました。 我々は基本的に手術後短期で帰国するため、手術患者の予後をメールで伺うことはできても、実際に診察ことは困難です。 しかし、今回術前診察の合間に過去の手術患者(両側性横顔裂の患者(第2回医療支援)や顎関節強直症の患者(第3回医療支援)) にも会うことができ術後経過が良好である事を安心すると同時に、患者さんが笑顔であったことが印象的でした。 この日は翌日の手術に備え、手術器具の準備、麻酔器の始業点検、手術室の環境確認、使用薬剤の確認、歯科麻酔科による術前指示を出し終了となりました。



手術

 翌日朝8時半より手術開始となります。今回は口唇形成術2例、口蓋形成術2例、顎裂部腸骨移植術1例、 片側口角形成術1例、口唇修正術1例、口唇鼻修正術1例、顎関節受動術1例の9例を1日3例ずつこなすスケジュールです。 手術初日、口唇修正術、口蓋形成術、顎関節受動術の順に施行されました。手術および麻酔機器にトラブル無く、今年初回の手術が無事終了。 手術症例の合間に昼食を取る事となりました。私は一昨年参加した際、ビニール袋から調理されたお米が出てきた事を鮮明に覚えていたため今年は…!?と思い席に着いたところ、 清潔な容器(いわゆるタッパー)に入った状態からお米を出して頂きました(写真8)。こういった細かな所の意識も少しずつ変わってきているのだなと感じ、 手術に備え手早く食事を済ませました。口の中にスープの辛さを残しつつ、次症例の準備に取り掛かりました。 顎関節受動術の症例は術前診察の段階で開口障害が予想されたため、予めファイバースコープを念入りに準備し、麻酔導入が開始されました。 このファイバースコープは昨年まで使用していたのもから一新されました。経鼻から挿入されたチューブを通して、ファイバー先端から映し出され、 気道粘膜がポータブルモニターに映し出される度に、ヤンゴンスタッフが食い入る様に見入っていたのが印象的でした(写真4)。 挿管は滞りなく終了し、手術開始。顎関節受動術を施行し、初日の手術を終えました。
 初日の勢いをそのままに、手術2日目は口蓋形成術、顎裂部腸骨移植術、口角形成術、手術3日目は、口唇形成術2例、唇鼻修正術が施行されました(写真5-7)。
 全日程を通して機器のトラブルや手術の滞りは無く終了し、最後は3日間共に手術を行ったスタッフ達と記念撮影を行い、絆が深まった支援となりました(写真9)。 さらに、手術期間中、執刀症例以外でも様々な症例についてディスカッションし、支援全体を通して新たな知識と技術を提供できたと考えています。
 最終日、空港に送迎して頂いたLPT先生と、再会の約束を交わし、ミャンマー支援事業を終えました(写真11)。





医療支援を終えて

 多くの企業からの援助を頂き、この事業は成り立っております。 本年も医療支援物資や資金援助を得、5回目となる医療支援を無事終えることができました。この場をお借りし感謝申し上げます。
 本医療支援事業が、単に医療情報や技術の提供に留まるのではなく、日本とミャンマー国同士の国際交流がより活性化するための一助となれば幸いです。

   




        
顎顔面口腔外科 永井孝宏

























顎顔面口腔外科学分野
TEL. 025-227-2885
FAX. 025-223-5792
E-mail. info-omfs@dent.niigata-u.ac.jp


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 2018年 第5回海外医療支援活動報告
 2017年 第4回海外医療支援活動報告
 2016年 第3回海外医療支援活動報告
 2015年 第2回海外医療支援活動報告
 2014年 第1回海外医療支援活動報告


写真.1:出国時(成田空港)

写真.2:支援物資の検閲
  
写真.3:術前診察

写真.4:麻酔導入

写真.5:術中写真1

写真.6:口唇形成術

写真.7:術中写真2

写真.8:昼食、手術控室にて

写真.9:最終手術終了後、スタッフと

写真.10:シェゴダンパゴダ

写真.11:帰国時(ヤンゴン空港)、LPT先生と