2017年 第4回 海外医療支援活動報告


新潟大学歯学部からヤンゴン歯科大学へ
口唇裂・口蓋裂を中心とする口腔外科手術に関する医療支援


 2014年から開始された本活動も、今年で4回目となりました。今回のメンバーは、前田学部長、歯科麻酔科から瀬尾教授と倉田先生、顎顔面口腔外科から髙木教授、児玉先生、私の6人が参加しました。倉田先生と私は今回が初めての参加です。2017年12月18日に成田からミャンマーへと旅立ちました。時差は2時間30分で飛行時間は約6時間程度ですので、午前11時に成田空港を出発し、ヤンゴン国際空港に到着したのは現地時間で3時過ぎでした。この時期のミャンマーは乾期にあたり、日中の気温は30℃程で冬の日本から来た私たちにとってこの気温差はこたえるものでした。(写真.1)空港の出口で待っているとまもなくヤンゴン歯科大学のスタッフがお迎えに来て下さいました。倉田先生と私以外の先生は何度も訪問しているので顔なじみになっており、一年ぶりの再会を喜びながら迎えの車に乗り込みました。初日はホテルへ直行して終了となりました。
 
 2日目、いよいよ本格的な医療支援活動の始まりです。ヤンゴン歯科大学に到着し、病院スタッフへの挨拶を簡単に済ませてから手術室への荷物の搬送を行いましたが、この手術室の環境も若干話には聞いていましたが、一昔前の日本の手術室といった印象で、大学病院であってもこの状況であることを考慮するとミャンマー全体での医療進歩の遅れを痛感しました。手術室への物資搬入を終えると翌日からの使用に備えての整理を行い、歯科麻酔科の先生はさらに現地の麻酔器のチェックなどを行っていました。特に今回は事前に顎関節強直症で強度の開口障害を伴っている患者さんの手術も予定されていましたのでファイバースコープの確認は念入りに行われていました。とは言え、このファイバースコープも実は本学部歯科麻酔科がかなり昔に使用していたものを1回目の支援時に提供したもののようで決して性能がいいとは言えないものとのことでした。また、搬送荷物は例年同様に本学部からの援助金、口腔外科麻酔科同門会や各方面の関連企業からの寄付金や手術器材・器具・医薬品(麻酔薬や抗菌薬など)の提供を受けて半年前から少しずつ準備してきたものです。荷物の搬送・配置を終えると学長室(と思われる部屋)に案内され、学長やヤンゴンの歯科医師会会長(だったと思いますが…)と言った重鎮の先生方に挨拶を行いました。ここでも倉田先生と私以外の先生方は顔なじみであり、冗談を交えつつ談笑している一方で、私達は緊張で汗だくになっていました。その後、いよいよ診察室へと向かい、術前診察を行いました。診察を待つ患者さんは今年は26人で、例年通り事前にヤンゴン歯科大学から新聞などで広報され、希望者を募って選ばれた方たちです。歯科麻酔科の先生が全身状態を確認し、我々口腔外科が病態の確認を行いました。その中から今回は10名の手術を我々日本チームが担当することになりました。手術の日程を決定し、翌日の手術症例に対する術前指示を行い、2日目の業務は終了となりました。

 3日目の12月20日から3日間の手術が始まりました。手術1日目は口唇形成術、軟口蓋形成術×2例、口唇及び鼻修正術の計4例が行われました。毎日午前9時から始まりましたが、1例目と2例目、3例目と4例目の間はほとんど休憩がなく、手術室の入口で患者さん同士が入れ違いになる状態でした。2例目と3例目の間に昼食時間がありましたが、手術室の横の小部屋で病院スタッフさんの手作り?で準備していただいた昼食を15分くらいでかき込んで食べて3例目の手術に向かうといったハードなタイムスケジュールでした。(写真.2)手術には主に髙木教授と児玉先生が入り、器械出しや外回りの看護師は向こうのスタッフが担っていました。(写真.3)器械出しや外回りの看護師はなるべく毎年同じ方がついてくださっているようで、最初こそ1年ぶりで慣れない感じでしたが回を追うごとに看護師さん達とのやり取りもスムーズになって行きました。今でこそ手術室スタッフとのコミュニケーションは英語でとれていますが、1回目の頃は英語もなかなか通じずコミュニケーションに難渋したそうです。しかし、年を重ねるごとに彼らは英語力をつけて今のように英語でのコミュニケーションがとれるようになったと聞いて、決して恵まれた教育環境で育ってきたわけではない彼らの努力に頭の下がる思いでした。4症例と多かったものの、手術1日目の全症例を順調に夕方の5時頃には終了することができました。  

 手術2日目は口唇形成術、顎裂部腸骨移植術、顎関節授動術の計3例が行われました。1日目より1例少なくはあったものの、この日はとても濃い1日でした。1例目の口唇形成術は順調に終わり、あとの2例に弾みをつけて望むつもりでした。というのも、まず2例目の腸骨移植はなんと患者さんの年齢が34歳でした。顎裂部は髙木教授が執刀し私がアシストで入り、腸骨採取は児玉先生が一人で執刀しました。この手術で大変だったのは腸骨採取で、児玉先生も34歳の腸骨採取はさすがに経験したことがなく、皮質骨が厚く硬く大変だったとのことでした。このように適正な年齢で適切な手術を受けられない患者さんがミャンマーにはまだまだたくさんいることを痛感した1例でした。さらに大変だったのは3例目です。3例目は顎関節強直症で開口量が5mmにも満たない高度な開口障害を伴う症例に対する顎関節授動術でしたが、ヤンゴン歯科大学の先生達からも特に注目度が高く、何人もの先生に囲まれての手術になりました。しかし、CTデータがフィルムのみで十分とは言えない情報量で、挿管にもファイバースコープを使用したものの難渋し(写真.4)、さらにTPSなどの機材の性能があまり良くなく骨の切削効率が悪かったことなども相まって14時頃から始まった手術は18時すぎまでかかり、何とか終わった時には皆ぐったりとうなだれ疲れ切った状態でした。それでも術後の開口量は30mmまで改善させることができ、満足の得られる結果となりました。

 最終日の手術3日目は口唇形成術、軟口蓋形成術、鼻修正術の3例を行いました。前日の疲れが残っている中での3例でしたが、いずれも順調に進めることができ、強いてトラブルを上げれば術中に停電が起きたくらいですが、倉田先生と私は急に電気が消えて驚いたのに比べ、他の先生は「あら、また落ちちゃったね」くらいの慣れた感じで手術を進めていました。電気が消えることは過去にも何度かあったようです。しかし、麻酔器や手術灯は別電源で機能していたので事なきを得ましたが、日本では考えられないことでとても驚きました。そして最後の症例が終了した時にはなんとも言えない達成感と安堵感を感じることができました。任務終了後には手術室のスタッフさん達と3日間の健闘を称え合い写真を撮りあってお別れをし、手術室の外では患者さん達も含めて集合写真を撮ったりと3日間という短い期間ではあったものの内容の濃い中でヤンゴン歯科大学病院で経験したことは非常に楽しく貴重な経験となりました。(写真.5、6、7)

 最後になりますが、今回も多くの方々や企業から医療支援物資や金銭的なご寄付をいただき、また口腔外科と麻酔科の先生方、外来病棟スタッフ、事務室長をはじめとした歯学部事務の皆様の様々なサポートのおかげで無事に本活動を遂行することができました。ご協力をいただきましたすべての関係者の皆様、この場を借りて感謝申し上げます。また、このようなヤンゴン歯科大学への国際医療支援は日本からは九州大学歯学部からも行われ、また他国では韓国などからも来られているようです。来年も本院による本活動の継続はもちろん、このような活動がもっと普及することで医療技術の移転・スタッフ教育・より良い医薬品や医療器具が普及し、一人でも多くのミャンマーの患者さんの笑顔のために、更には他の医療後進国の患者さんの笑顔のためにお役に立てることを切に願います。  



        
顎顔面口腔外科 上野山敦士



顎顔面口腔外科学分野
TEL. 025-227-2885
FAX. 025-223-5792
E-mail. info-omfs@dent.niigata-u.ac.jp


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 2015年 第2回海外医療支援活動報告
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写真.1


写真.2

  
写真.3


写真.4


写真.5


写真.6


写真.7