研究紹介

研究について

 当科では、1)腫瘍・再生、2)口蓋裂・変形症、3)顎関節・外傷、4)有病者・感染対策に関わる診療班を形成し、大学院生の指導もふくめて研究しています。その他に、医歯学総合病院が北関東甲信越地区のエイズブロック拠点病院となっていることから、医科との連携のもとHIV感染者の歯科治療のコーディネートも担当しており、唾液中のウイルスに関する研究も行っています。

1)腫瘍・再生班:永田、小玉、勝見
 個別化治療を目指したより鋭敏な口腔癌バイオマーカーの開発と臨床応用
 培養自家骨膜による歯槽骨・顎骨再生医療の臨床応用

2)口蓋裂・変形症班:児玉、大湊
 Hotz床併用二段階口蓋形成法による集学的管理体制から顎発育と鼻咽腔閉鎖機能等を解析
 唇顎口蓋裂の発生に関わる遺伝子解析研究

3)顎関節・外傷班:池田、大貫
 顎関節脱臼および関節突起骨折の発生機序の解明
 顎顔面深部領域における慢性疼痛の中枢神経メカニズムの解明

4)有病者・感染対策班:小山、黒川、西川
 全身疾患を有する患者に対する医科的治療開始前の口腔ケアに関する臨床的検討
 HIV感染者に対する歯科治療ネットワークの構築

唇顎口蓋裂

 当科では1983年から二段階口蓋形成法による集学的管理体制を展開しており、本体制に関わる顎発育や鼻咽腔閉鎖機能といった形態的、機能的解析を行っております。また唇顎口蓋裂の発生に関わる遺伝子解析研究も推進しており、今後の発展が期待されます。

 一般社団法人 日本口蓋裂学会の学術調査委員会が主導し、全国規模で「口唇裂・口蓋裂児出生に関する実態調査」の準備が進められています。その中で、新潟県で先進的に口蓋裂治療に取り組んできた当科も調査機関として協力することになり、倫理委員会の承認を得ました。

★詳細についてはこちらへ提示いたします。

口腔腫瘍

 口腔でもっとも多い扁平上皮癌を中心に、診断・治療・予後に関する多岐にわたる研究を推進しています。主な研究としては口腔扁平上皮癌の網羅的遺伝子発現解析を実施して、予後判定因子として有用なバイオマーカーの開発と臨床研究を推進しています。これによって従来制御することができなかった遠隔転移や局所再発をきたす高度悪性癌を転移巣や再発巣を形成する以前の早期癌の段階で鑑別し、抗腫瘍剤による化学療法や放射線療法の選択的施用(個別化)による癌制御率向上を目的にしています。これまでの研究成果の実用化を目的として、他大学病院との他施設共同臨床研究を実施中です。

★研究の詳細については、研究実施計画として本ホームページ内に提示しています。

 そのほか、口腔病理学分野と連携して前癌病変から進行癌への発展に関わる基礎的研究を展開しています。

顎関節疾患

 顎関節は人の体の中で左右一対が同じ骨でつながっている唯一の協働関節です。こうした特殊性から顎関節部に特有の疾患、例えば顎関節症や希な腫瘍性疾患、また顎関節脱臼など様々な疾患が認められます。私達はこれまで、顎関節症における疫学調査やその病因と発症機序に関する研究、腫瘍性疾患における症例の蓄積を元に適切な治療を行っております。また、近年は原因不明の下顎頭吸収に対して、顎関節治療部ととともにその治療を行っており、現在、原因究明に向け取組を行っております。

顎変形症

 顎矯正手術は規格化された手術として確立され、安全かつ短時間での施術が可能となっています。しかし、術後に何らかの機能障害を来す場合や予期せぬ偶発症に遭遇したという報告も多く、こうしたリスク回避に対する尽力に終わりはありません。私達は診断や治療の精度向上を目指す一方で、患者が安全に安心して顎矯正手術に臨めるよう、臨床的な研究を通してこうした問題に取り組んでいます。また、オーダーメードの人工骨移植を行い、生まれつき顎骨に変形があったり、手術後に生じた顎骨欠損症例に応用しています。

歯槽骨・顎骨再生医療とインプラント

 近年、疾患の結果失われた顎骨や歯の再建は口腔外科領域では非常に重要なテーマとして扱われています。当科では患者さんご本人から採取した顎骨の骨膜を新潟大学医歯学総合病院内のバイオクリーンルームで培養して、歯槽骨・顎骨への移植に用いる、培養自家骨膜による歯槽骨・顎骨再生医療の臨床試験を実施しています。これまでに50人を超える患者さんに施用した結果では、培養自家骨膜の施用によって質的、量的に細胞の豊富な良質の再生骨が得られることが明らかになっています。この歯槽骨・顎骨再生医療技術について今後は国の認可を取得して新潟大学独自の再生医療としての実用化を目指しています(Nagata et al. (2012) Bone 50:1123-9; doi:10.1016/j.bone.2012.02.631)。

 臨床研究の一方で、培養条件の至適化による、培養期間の短縮と製造された培養自家骨膜細胞の骨形成能を高める基礎研究を進めています。これまでに無血清培地の採用と骨芽細胞への分化誘導によって骨形成能の強化が確認されており、将来的にその安全性と効果を動物実験で検証したうえで、骨再生医療における安全性と低侵襲性を高めた次世代の培養自家骨膜による歯槽骨・顎骨再生医療技術の臨床化を目指しています。

エイズに関わる研究

 HIV感染症・後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因となるウイルスは、血液中だけでなく唾液中にも確認されています。私達は医科との連携のもと、HIV感染者の唾液中ウイルスを測定するとともに、HIVの検査法や検査体制についての研究を推進しています。今後の展望として唾液を用いた簡便で侵襲の少ないHIV診断法の開発を目指しています。

情報開示を要する臨床研究

 現在遂行中の以下の6件の研究につきましては、情報公開を要する臨床研究に該当いたしますので、それぞれ情報を開示いたします。
・「ゾレドロネートおよびデノスマブ使用患者における薬剤関連顎骨壊死の発生状況の調査」[PDF]
・「低侵襲化をめざした口唇口蓋裂治療体系の開発と多施設比較による有効性の検証」[PDF]
・「口唇裂・口蓋裂児出生に関する実態調査」 [PDF]
・「二段階口蓋形成術を行った唇顎口蓋裂児の咬合評価」
   ~術式と施術時期の異なる3群間の比較検討~ [PDF]
・「下顎埋伏智歯抜歯術のSSI発生と予防的抗菌薬投与方法の検討」 [PDF]
・「口腔機能に関する退院時患者アンケート調査」 [PDF] NEW

 各診療班の研究テーマについては毎年の論文、学会発表、科研費申請などをご覧いただくと、より詳細な内容を御理解いただけると思います。