研究推進機構超域学術院 歯周 - 全身プロジェクト 山崎研究室

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留学便り 海外での生活

高橋 直紀 Naoki Takahashi Postdoctoral Fellow, University of California San Diego, School of Medicine

From San Diego


 大学院も最終学年の4年目に入り、そろそろ卒後のことも考え始めなければと思っていた頃、山崎教授から「留学してみないか?」とお話を頂きました。英語は勿論できないですし、留学期間は少なくとも2年間、しかも留学先は医学部の基礎系の研究室とのことで、正直戸惑いもありましたが、これはまたとない大きなチャンスと思い、留学することを決意しました。

 今回の留学は、日本学術振興会が支援する国際交流事業「頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラム」の一環として参加させていただき、留学先はアメリカ西海岸のサンディエゴにあるカリフォルニア州立大学サンディエゴ校(UCSD)で、2011年の3月よりpostdoctoral fellowとして研究に勤しんでいます。サンディエゴの紹介は同じく本プログラムに参加している野中先生に任せることにして、私は研究内容について少し紹介をしたいと思います。UCSDの医学部に属するRaz教授のラボでは、免疫学とりわけ腸管粘膜を中心とした基礎研究が盛んに行われています。腸管組織は、パイエル板をはじめとする高度な免疫装置が発達し、実に末梢リンパ球の60-70%を擁する人体最大の免疫組織であり、免疫学の格好の研究対象であります。私たちが大学院時代に行っていた研究テーマである、歯周病が全身疾患に影響を与えるメカニズムを探るにあたり、そのヒントを得ることがひとつの目的でした。しかしながら、医学領域の知識は学生時代に齧った程度のものしか無く、留学当初は言語の壁以上に専門外の分野に困惑する毎日でした。duodenum? jejunum? ileum? 全く聞いたことのない英単語を調べることから始まり、動物実験ではマウスの糞をひたすら集めては実験サンプルとして解析し、同じ仕事の繰り返しで飽き飽きしかけた時期もありました。そんな時期を乗り越え、今では腸炎疾患モデルマウスを用いた実験から腸癌モデルマウスの解析へと発展し、そこから派生して幹細胞の研究にも関わっています。面白いことに、大学院時代に培った歯周外科手術での縫合のテクニックが買われ、マウス皮膚移植モデルのプロジェクトにも携わることができたのは光栄でした。細胞への遺伝子導入やタンパクの強制発現と言った分子生物学的な実験から、ノックアウトマウスやトランスジェニックマウスを使った動物実験と、毎日のように細胞とマウスと戯れながら大変充実した日々を過ごしています。将来的に、こちらで得た腸管粘膜研究における実験手技やアイディアを今後口腔粘膜に応用することで、私の専門である歯周病における新たな予防法や治療法の開発につながる可能性を秘めていると信じています。

 歯学部に入学当初、まさか自分が大学院に進学し、留学まですることになろうとは夢にも思っていませんでした。留学してまだ1年あまり、決して楽しいことばかりではありませんが、これまでの自分の人生のどの1年間よりも充実したものでした。日本から世界へ、歯学から医学へ、臨床から研究へ。自分自身の見識を広げ、価値観を大きく変えることができる経験は、研究者としても医療人としてもこれからの人生において何にも変え難い大変貴重なものだと思います。そこの君、留学を目指して大学院進学を検討してみてはいかがでしょうか。

 最後になりますが、このような貴重な機会を与えて下さいました山崎教授ならびにお世話になりましたすべての方々にこの場を借りて感謝申し上げます。

ラボメンバーと一緒に
私とRaz教授,山崎教授,多部田准教授

野中 由香莉 Yukari Nonaka Postdoctoral Fellow, University of California San Diego, School of Medicine

America’s Finest City


 私は今、「頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラム」による支援の下、University of California San Diego (UCSD) にて研究活動を行っています.私が現在生活しているSan Deigoは“America’s Finest City”といわれる、全米でも憧れの町です。なによりも素晴らしいのは雲一つ無い青空です。新潟の晴れ間の少ない天候を日常としていた私には信じられないほど毎日が素晴らしい気候です。3月からはDaylight Saving timeに入ったため、さらに日の入りが遅くなり過ごしやすくなりました。都会過ぎず、田舎過ぎず、スーパーの店員さんさえとてもフレンドリーで親切です。道端には南国らしい色とりどりの花とヤシの木が並び、青い海と青い空に囲まれたとても美しく暮らしやすい町で、5ヶ月目の今ではすっかりこの生活とこの町が大好きになりました。

 San Deigoには現在私が所属しているUCSDの他、The Scripps Research Institute、La Jolla Institute、Salk Instituteなど世界トップレベルの研究機関が存在し、医学、化学、物理、植物、天文、海洋、などなど多方面の研究者が集う町です。研究機関相互の交流も盛んであり、実験機器を使用するために他施設を訪れることもしばしばですし、研究セミナーも頻繁に開かれます。まさに一流の研究者のHotなDataとDiscussionで満ちています。

 しかし、渡米した当初はまず英語が聞き取れない、話せない(これは今現在も継続している問題ではありますが…)中で、住居を決める、電気を開通するのも一苦労。さらに大学でも手続きに追われ、生じてくる数々のトラブルに涙を流した夜もありましたが、同じラボの高橋先生をはじめ、ラボマネージャーやこちらで知り合ったたくさんの方々に助けていただいてなんとか生活を軌道に乗せることができました。本当に感謝してもしきれない程です。

 そういった面では日本人研究者が多いことも、単身で渡米している私にとっては大変暮らしやすい環境です。日系スーパーも非常に充実しており、味噌でも納豆でもほぼ手に入らないものはないといえるほどで、絶対的和食派の新潟県民もカリフォルニア産コシヒカリを毎日おいしくいただいております。

 私が研究を行っているDr. Eyal Razのラボメンバーも本当に優秀かつ人間的に素晴らしい方々ばかりです。自分の能力のなさにふがいない思いをすることも多いですが、今までと全く違う分野に飛び込んだことも、毎日が新しい発見と勉強であり、ラボの皆のおかげで楽しみながら仕事を進めることができています。イスラエル、フランス、オランダ、中国、韓国、そしてアメリカと、世界中の様々な国から集まった彼らと今、共に過ごせることをとても幸運に思います。

 まさにここSan Deigoでの全ての人々との出会いこそ、私にとっては“Finest”であり、一生の宝物になると確信しています。留学という貴重な経験を素晴らしい思い出にできるよう、残りの期間も精一杯頑張りたいと思います。最後に、このような機会を与えて下さった山崎教授をはじめ、留学生活を支えてくれる全ての方々に心より御礼申し上げます。

ラボメンバーと一緒に
Stein Clinical Research Building

前川 知樹 Tomoki Maekawa Postdoctoral Fellow, University of Pennsylvania, School of Dental Medicine

Laws Without Morals are Useless


 歯学部6年生時にアメリカのScripps research instituteへの留学から戻られた多部田先生、現所属超域学術院・准教授(当時は歯周診断再建学分野・助教)に大学院を勧められました。元々私は大学院に進みアカデミックの道を目指していたので、よい機会だと思い大学院への進学を決めました。当研究室では、山崎教授をはじめ中島先生や多部田先生、土門先生、伊藤先生と研究留学をされた経験のある先生がいらっしゃるため大学院時代から海外への留学に興味をもっていました。海外に留学するためには大学院時代にしっかりとした研究技術と知識を学ばなければいけません。当研究室はその点においても設備や指導体制が整っているため現在アメリカで研究を続けていても特に大きな問題はありません。また留学に際し、適切なアドバイスを受けることができるのも当研究室ならではだと思います。

 フィラデルフィアはアメリカの東部に位置し、人口150万人を超える全米でも第4位の都市です。しかし、日本人はペンシルベニア州に800人以下といわれるほど街で日本人に会うことは稀です。市内は電車、地下鉄、トロリー、バスと公共交通機関が充実しているためどこにでかけるにも困ることはありません。NYには車で1時間30分、ワシントンDCにも3時間で行くことができ日帰りで観光が楽しめます。またフィラデルフィアには、アメリカ4大スポーツである野球、アメフト、バスケットボール、アイスホッケーのチームがありスポーツコンプレックスにていつでも観戦が可能になっています。

 私の所属するペンシルベニア大学(University of Pennsylvania: 通称UPenn)はフィラデルフィアの中心部に位置し、University Cityを形成するほどとても大きなコミュニティーを作り上げています。創立は1740年でベンジャミン・フランクリンが創設者の一人であり、アメリカ合衆国東部の世界屈指の名門私立大学8校からなる連盟(Harvard大学, Yale大学, Columbia大学、他)に所属しています。医科系はNIHから全米第2位の額の研究費(550億円)が与えられており、設備もすばらしく研究に関しても世界のトップクラスのラボを間近にみることができます。

 私の所属するHajishengallis教授のラボは、免疫学、細菌学を中心として歯周病に関連した基礎研究から臨床応用にむけた研究まで多角的に行われています。以前はケンタッキー州ルイビル大学にてラボを持っており、その際には山崎研究室所属の土門先生がポスドクとして留学しておりました。そこでの土門先生の働きが評価されたことも今回の留学につながったと思います。現在、ポスドクは4名(日本、中国、インド)、ラボマネージャーが1名の計5名ですが、今度ポスドクがさらに2名(ヨーロッパ、韓国)増える予定です。現在はマウスに実験的に引き起こした歯周炎の治療・予防にプロバイオティクスの概念を応用しようと考えております。また歯科関連だけではなくリウマチ関節炎モデルを用いた病態解析も同時に行っております。

 日本では今、留学を志す人が少なくなっているといいます。もちろん日本の研究レベルが向上し留学する必要がないと考えている人もいるかもしれませんが、世界を知らなければ日本を知らないのと同じではないかと私は思います。臨床を続けられず他の人と差をつけられるのではと思っている方もいるかと思います。しかし、留学から帰ればいくらでも診療はできます。それよりも世界中から様々なバックグラウンドをもった研究者が集まり、日本以外で暮らした経験(もちろん辛いことも楽しいことも)は一生の宝物であり他の人には味わえない幸せだと思います。悩んでる方は一度でいいですので当研究室の先生方に話を聞いてみてください。

 このような貴重な機会を与えてくださった山崎教授、多部田准教授はじめ研究室の先生方、ならびに留学を支えてくださった方々に御礼申し上げます。

ラボメンバーと一緒に
フィラデルフィアの街並み

宮内 小百合 Sayuri MIYAUCHI Postdoctoral Fellow, Moores UCSD Cancer Center University of California San Diego

留学便り


 2014年5月よりカリフォルニア州立大学サンディエゴ校(UCSD)にてPostdoctoral fellowとして研究活動をしております。こちらに来てちょうど2年が経過しました。慣れない環境の中必死で生活していたためか、とてもあっという間だったように感じますが、改めて振り返ってみるといろいろな出来事が思い出され、これまでの人生の中でも特に充実した2年間だったと感じます。

 大学院進学当初から留学に興味はあったものの、語学力や研究経験の乏しい私が留学してやっていけるのだろうかという不安もありました。大学院を修了し研究員として1年間研究および臨床に携わらせていただいたのですが、研究に費やすことのできる時間が院生時代よりも少なくなってしまい思うように研究を進めることができずもどかしく感じていた中、現在のラボでポスドクを探しているということで幸運にもそのお話をいただきました。迷いもありましたがこれは大きなチャンスだと思い、留学させていただくことに決めました。

 以前San Diegoに留学された高橋先生や野中先生からも紹介がありましたが、南カリフォルニアに位置するこの土地は、一年を通して温暖でとても過ごしやすい気候です。雨もほとんど降らず(むしろ今年は歴史的な水不足に悩まされましたが)、ほぼ毎日すばらしい青空が広がっております。すっかりこの気候に慣れてしまったため、帰国した際に新潟の厳しい冬を乗り越えることができるかがとても心配なほどです。さらにUCSDが位置するこの周囲は、多部田先生が留学されていたThe Scripps Research InstituteをはじめLa Jolla InstituteやSalk Instituteなど多くの有名な研究所が集まっているエリアで、UCSD内はもちろん、研究機関相互間でも共同研究や研究機器の貸し借りが積極的に行われております。また、著名な研究者によるセミナーが頻繁に開催され、最新の研究内容をいち早く学ぶことができます。この土地は、生活面においても研究面においても大変恵まれた土地であると感じています。

 私の留学先はMoores UCSD Cancer Centerに所属するDr. Dong-Er Zhangの研究室です。急性骨髄性白血病の発症メカニズムや造血機構、固形腫瘍進展におけるタンパク修飾や免疫応答に関する研究を行っております。腫瘍研究は私にとって未知の領域であり、渡米当初は知らない英単語や実験手法に囲まれて大変苦労しました。しかしその分すべてが新鮮で、日々新しいことを学ぶことができています。現在はある分子の腫瘍進展・免疫応答における作用メカニズムの解明、ならびにその分子を標的とした遺伝子治療の臨床応用への基盤を構築することを目標として研究を進めております。なかなか良い実験データが得られず落ち込むこともありますが、実際に免疫療法に応用できる可能性をもつ現在の研究テーマに面白さとやりがいを感じながら、日々マウスと細胞と共に過ごしております。

 この2年間、決して楽しいことばかりではありませんでしたが、楽しいことも辛いことも含めそれらの経験すべてが日本にいてはできないものであり、何事にも代えがたい貴重な経験だと思います。私が留学するかどうか悩んでいた際に、留学経験者の先生方が口を揃えてこのようにおっしゃっておりました。それを今、身をもって感じることができております。

 最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった山崎教授、多部田先生をはじめ、留学生活を支えてくださっている全ての方にこの場をお借りして心より御礼申し上げます。

Moores UCSD Cancer Center
同じ部屋のラボメンバーと