私見雑感

倉敷市開業 (5期生)近藤 修六

クラブ(テニス部)の先輩でもある神田会長の元で副会長をさせていただいています5回生の近藤修六です。何かにつけて問題に挙げられる団塊世代に生まれ50という大台を目前にし、大原美術館で有名な郷里倉敷市で開業して以来20年の歳月を経てまいりました。

歯学部ニュースの原稿を依頼され先ず思ったことは、私が学生時代の歯学部創設以来から存続し、いつも興味深く目を通してきた歯学部の歴史本だということです。確かこの機関紙の存続が紙面で論評されたことがありますが、大学を離れた同窓が本学部の情報を知る唯一の機関紙です。予算・編集の苦労はあると思いますが歴史的意義を踏まえ是非継続を図ってもらいたいと切にお願いします。

この紙面上で多くの先輩達が歯科界を取り巻く諸問題・環境の厳しさを論評してきましたので今後の歩むべき道を述べたいと思います。

1、 歯科界の未来はないか?

未来はけして暗くないと断言します。少なくとも我々団塊世代が老人になる超高齢化社会では、一生をいかに健康寿命でまっとうするかが非常に重要な社会的要求でありそのための健康の管理・維持に強い関心が集まります。現在は無歯顎の人も多くいますが、今後はその数も激減し有歯顎のままで(8020運動の効果)一生を終える人が劇的に増加します。しかし、そのための努力は全部床義歯をつくる労力よりはるかに多くのエネルギーを要します。加齢に伴う口腔キュアー・ケアーは我々の領域です。特にケアーは常に患者との接触・管理を強く求め、超高齢化社会では地域・家庭に密着したホームデンティストの存在がますます重要です。多くの経費と技術を要したキュアーから、心と地域性が求められるケアーに着目した医院経営が今後の歯科界の展開を広げると思います。

2、 学生に告ぐ

情報の氾濫した現在、大学にも多くの雑音が入り、いかにも歯科界の前途が暗澹たるイメージがありますが、常に真摯に学ぶ姿勢を持ってください。私が学んだ歯科学問も今日では全く古典的知識になりました。卒業以来医療面では、遺伝・免疫・接着・インプラント・老人医療・訪問診療そして最近では介護保険など、大学では学ばなかった多くの学問が出現し、時代とともに歯科医療は大きく変化し、患者の知的レベル・要求も非常に高くなって来ました。大学で十分学術的基礎を学び一生学び続ける心を持って下さい。自然淘汰・生き残り競争を強いられる今日の日本社会、歯科界も例外ではありません。老獪な年寄りが歯科界の利権を(収入・歯科医師数)を守ろうと中央に働きかけていますが、時代の流れを止めること、過去に逆戻りすることなどはもはや幻想です。時代を切り開くのは志ある青年です。新しい知識とバイタリティで21世紀にチャレンジしてください。

3、大学に望む。

今日の国の大学問題は経済論理が優先するのか、「国家100年の計は教育にあり」先人の国家建国の思想は忘れてしまったようです。その中で、大学改革の苦労は大変なものがありますが、官学の知命は等しく公平な試験で選ばれて入学した若者を、志ある歯科医師・医療人として世に送る出すことにあります。本学部に対する歯科界上層部の圧力には呆れるものがありますが、すばらしい人材を輩出し、その存在をアピールしていくことでその存在意義を訴えることが重要と考えます。

また、大学は研究業績に評価の全てがあると思います。臨床的には多くの在野の臨床家がすばらしい報告をしていますが、その背景の裏付けは大学等の研究機関の役割です。今日の科学情報・変化・歯科界の厳しさ故、迅速な対応が要求されますが、大学もそのスピードに答えるべく努力をして欲しいと思います。確かに大学には温室的土壌が一部あり、今日の技術革新・世の変化に対応しきれていない部分も多だありますが、設立当時のような若いエネルギーを結集し、風通しのよい学部に再構築されることを切にお願いいたします。


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