歯科技工士への出発点

田代典宏

歯科技工士となることを目標としてこの学校に入学してからもうまもなく2年になる.短い時間と考えれば短く,長い時間と考えれば長い.今まで,学生として生活してきた年月の不思議な2年間であったと感じる.入学当時,技術も知識も伺いもない自分の体は学校のペースの早さにとまどうことは,毎日のようにあった.その度に現実から逃げようとしていた.そのような気持ちも今考えると「自分への甘え」という言葉で簡単にかたづけてしまうことができる.自分自身この学校に入学し一番学んだことは技術,知識はもちろんだがなによりも,技術を身につけるという厳しさであった.今までの学校生活といえば何か作製すればそれで終わりだった.しかし今度は最低ライン以下であると前には進むことができない.あたりまえのことだが,このことが自分を学生としての考えから,技工士としての考えに変えてくれたものであった.自分への甘えはすべて結果となってさらけ出されてしまう.それが自分自身を少し強くしてくれた理由ではないだろうか.卒業を目の前にして感じることは今が歯科技工士としての出発点に立っているということである.これからの毎日は自分との戦いであり,自分に負ければきっと技術はそこで終わってしまう.自分に勝ち続ければ技術の終わりはない.そして将来,技工士学校卒業の時が「終わりのない出発点」であったと思えるよう今,この時の気持ちを一生忘れないでこれから歯科技工士という道を進んでいきたいと思う.最後に自分を強くしてくれた先生方,友人,そしてなにより歯科技工士というものに感謝したい.


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