大学院時代をふりかえって

口腔病理学講座 大竹 祥子

大学院進学を希望して、両親に連絡したとき、電話口から開口一番聞こえてきたのは次のような言葉でした。「まーだ、勉強するの。すごいねえ。えらいねえ。」そして、これに続く不敵な微笑。なにを失礼な、娘の向学心に水を刺すようなことをいわなくてもいいじゃーん、とそのときは勢いこんでいましたが、大学院生活を終えよう
としているいま、大学、さらに大学院まで大のおとなにすねをかじらせてくださった
ことに感謝しています。

そもそもこの口腔病理学講座を選んだ動機は、「病理診断医ってかっこいい。」というなんとなく、よこしまな、イメージ先行。私にもできるかな、難しいんだろうなという漠然とした不安とともに、朔教授のもとを訪れたのでした。口べたな私は、黙ってなにもいうこともできず、「口腔外科で臨床研修をして下さい。」「ちゃんとや
れるかな。」とおっしゃる教授に「はい。がんばります。」と返事をするのが精いっぱいでした。

こうして、まず、口腔外科の研修が始まり、第一口腔外科、歯科麻酔科の先生方によくご指導いただき充実した研修期間を送ることができました。この期間中に患者の死と病理解剖を直接みることになり、貴重な経験となりました。そして、いよいよ病理診断の実際を学ばせていただくかたわら、研究・実験の日々が始まったのですが、もともと大学生時代から不勉強だった私には、わかないことばかりで、何度も弱音をはきました。あこがれの病理診断に関しては、このピンクと紫の切片標本一枚に秘められた謎解きのようなおもしろさと難しさ、教科書にはのせられていない、のせきれない奥深さがあることを教示され、肌で感じ、感動することも
またしばしばありました。途中、名字が変わったり、新しい家族が増えたりして、私的にもめまぐるしい変化
があり、集中して研究にとりくむことがままならないこともありましたが、そのたびに朔教授をはじめ講座の先生方に暖かく、時には厳しくご指導、ご助力いただき、なんとか卒業までやり遂げることができました。
 振り返るととたくさんの出来事がありましたが、印象深く思い起こされるのはやはり、いろいろな方々との出会いや新しいことを始めたころのことです。そのころ、どんなものを目指していたのか、思い通りになってきたのか結果はさておき、力一杯やってきてよかった!ご支援していただいた様々な方々に心より感謝いたします。


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