教授就任にあたって

口腔外科学第二講座  教授 高木律男

平成10年12月1日付けで、大橋名誉教授の後任として口腔外科学第二講座を担当させていただくことになりました。大橋先生が新潟の地に赴任されて、口腔外科学第二講座が開設されたのが、昭和48年(1973年)の12月ですので、丁度講座開設後25年ということになります。

私は長野県飯田市出身で、昭和49年長野県立飯田高等学校を卒業し、当講座が開設された頃に新潟市に移り、新潟大学歯学部を昭和55年に卒業した10期生です。ですから、卒業後今年で20年目、やっと歯科医として成人式を迎える時期にあたります。この間、歯学部ニュースでは学会報告(平成4年度、第2号、他)、大橋 靖教授・最終講義を終えて(平成9年度、第2号)、附属病院の患者さんのためのページ(平成10年度、第1号)の他、自己紹介的な経験談を記した、素顔拝見(平成2年度、第1号
)、海外レポート(平成5年、第1号)に登場させていただきました。したがって、自己紹介については、かなり重複する事もあるかと思いますので、細かなところは素顔拝見を御参照下さい。

さて、研究面では私が入局した1980年当時、顎関節疾患は顎関節内障の概念が取り入れられ始めた頃で、外科的な治療法が一躍脚光をあびており、診療班としては顎関節班に所属し、今日の基盤となった色々なことを、昼夜かまわず懇切丁寧に教えていただきました。第二口腔外科では4年間お世話になり、以前より病院で歯科口腔外科をと考えておりましたので、関連病院であった上越・新井市の厚生連・頚南病院に就職しました。同院では、医学部各科の先生方と親しくしていただき、医科の中および開業歯科医院の中における病院の歯科口腔外科の役割を考えさせられるとともに、一生病院の歯科医として続けていくには、もう少し口腔外科の手術・患者管理を習熟すべきであることや、学位、認定医などの資格が必要になるであろうことを実感し、2年半後もう一度、大橋教授にお願いして、第二口腔外科に戻していただきました。以後、顎関節の仕事を再開し、その診断にあたり、顎関節部の病態把握に必要であった顎関節腔造影に始まり、顎関節鏡、関節腔内洗浄療法などの外科的アプローチを中心に担当させて頂き、臨床・研究のまとめとして顎関節部の血管に関する研究で学位論文をまとめるとともに、日本口腔外科学会の認定医・指導医の資格も取得することができました。今思い起こしてみると、これらの仕事をまとめるにあたりご指導いただきました先生方はもとより、頚南病院でその必要性を感じさせて下さった先生方に感謝するとともに、日頃行っている仕事の一つのステップとなるこれらの資格の重要性を強調し、今後の指導の中でも生かして行きたいと思っています。

上記の資格とは別に、これまでの在局期間中の大切な経験として、平成3年の1月から7月までの半年間、文部省の在外研究員として渡米させていただいたことがあげられます。このあたりも詳細は海外レポートに譲らせていただきますが、海外での研修をする事で得られるものは、計り知れないもので、研究の他、留学先でお世話になった先生方を始め、同じ時期に留学中の日本人の先生方とのつながりは、日常臨床と離れた所での貴重な経験で、帰国後も大切にしています。したがって、海外留学を経験
されていない先生方や学生諸君には、半年でも良いから是非一度経験されることをお勧めします。

自分の研究・経験の事ばかり書きましたが、大橋先生が御退官になられてこの1年間、講義・臨床実習の試問で学生さんと話をする機会が急増いたしました。私達臨床講座では、臨床・教育・研究が三本柱なのですが、教育に関しては大橋先生にお任せしていた部分が多く、今回引き継ぐにあたって、その大変さを痛感いたしました。口腔外科の講義は、多岐にわたる疾患を網羅しており、自分自身学生時代にも困惑した思い出があります。ただし、疾患を記憶することは、歯学部に入るだけの学力のある学生には、努力次第で克服できることですので学生さんに任せるとして、その土台の上に立って、1、診断するための手順、方法、器具(画像など)の選択ができる。2、各疾患に対する治療方法の選択と予後の予測ができる。3、疾患単独のみではなく、全身的な診断ができる。などの到達目標を持って講義にあたる所存です。我々の教室で経験した症例をもとに、臨床では観察しにくい口腔内の所見をスライドとして見ていただく良い機会ですので、少しでも多くの症例を講義の中で経験してほしいものです。また、臨床につきましては、当科の様な臨床講座で一番大切なことは、患者さんが来院されるということです。まずは患者さんが来やすい環境、来て良かったと感じる診療内容を提供することにあると思います。当講座では、口腔外科疾患の中で特に唇顎口蓋裂、腫瘍、変形症、顎関節疾患の診療・研究グループを作っており、常に質の高い診療を提供できるように努めております。今後も、これまで同様に関連各科との連携のもとに頑張る所存ですので、医学部各科の先生方、開業歯科の先生方、歯学部附属病院院内各科の先生方には、ご理解とご協力をいただけれますようお願い申しあげます。

最後に、この度、教授に昇任いたしましたが、まだまだ若輩者で、これから学ぶべきことが山積みされております。先輩教授、諸先生方、事務の皆様方には、今後も当講座が各方面で発展できますよう、ご指導ご鞭撻をいただけますようお願いいたします。


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