実施事業

実施報告

再生医療人育成プログラム 研究報告
キトサン/ウロココラーゲンを用いた培養口腔粘膜作製

手術や外傷などによって口腔粘膜が大きく欠損した場合、従来、植皮が用いられてきた。近年、ティッシュエンジニアリングという新しい技術の発達によって多様な生体材料や細胞培養製品が開発され、口腔粘膜再生医療の実現に大きな役割を果たしてきている。一方で、ウシ血清に代表される動物由来製剤を用いられることが多く、 BSE(牛海綿状脳症)に代表される未知の外来性汚染因子による感染の可能性を否定できない。また、ヒト由来の材料は高コストで安定供給に不安がある。そこで我々は、外来汚染因子による感染の可能性がなく、安定供給可能な甲殻類の外骨格から得られるキトサンおよびテラピアから得られるうろこコラーゲンを用いた新規足場材料を開発し(図1)、口腔粘膜再生治療の有用性を検討した。

(バイオインダストリー11月号 2011年より抜粋)

キトサン・うろこコラーゲン複合材料を足場材料とした培養口腔粘膜を作製し、組織学的に比較検討した結果、本材料は、現在臨床応用に本学医歯学総合病院で用いているAlloDerm®に比べ上皮細胞の配列はやや規則的ではないが、正常口腔粘膜に類似した最表層に角化を示す重層扁平上皮の形成が確認された(図:上段)。また、免疫組織化学的に、基底膜マーカーであるLamininについては(図:下段)、陽性反応が認められなかったが、細胞外基質として沈着している所見が得られ、基底膜の形成は未熟であることが示唆された。

以上より、本材料は、基底膜成分の付与などの改良の必要性はあるものの、がなく、安定供給できる培養複合口腔粘膜作製用の足場材料として有用なであることが示唆された。

Terada M, Izumi K, Ohnuki H, Saito T, Kato H, Yamamoto M, Kawano Y,Nozawa-Inoue K, Kashiwazaki H, Ikoma T, Tanaka J, Maeda T. Constructionand Characterization of a Tissue-Engineered Oral Mucosa Equivalent Based on a Chitosan-Fish Scale Collagen Composite. J Biomed Mater Res B Appl Biomater, in press.

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