International Symposium on Health Through Oral Health Collaborative Education, Research and Practices 報告
- 開催日
- 2013年12月20日(金)~22日(日)
- 場所
- タイ王国・クラビ
2013年12月20日(金)~22日(日)に、タイ王国・クラビにて、表記の国際シンポジウムが行われましたので、ご報告いたします。
本シンポジウムは、「国際イニシアティブ人材育成プログラム」の一環として、文部科学省の支援を受け、新潟大学歯学部とプリンス・オブ・ソンクラ大学歯学部(タイ王国)の共催で開催されました。
開会に際し、本学の前田健康歯学部長から開会宣言、プリンス・オブ・ソンクラ大学のChairat CHAROEMRATROTE歯学部長から歓迎の挨拶がありました。
本シンポジウムは以下のように進められました。
基調講演:魚島勝美教授(本学・生体歯科補綴学)/ Murray THOMSON教授
(ニュージーランド・オタゴ大学)
最新技術である再生歯科医学に倫理をもって取り組んでいくこと、同時にこれまで長い歴史を歩んできた歯科医療/口腔衛生も継続していくことの両者が将来の患者の利益になると述べられました。
シンポジウムⅠ:Regenerative Dental Medicine 再生歯科医学シンポジウム
- 座長
- 泉健次教授(本学・生体組織再生工学)
- Premjit ARPORNMAEKLONG准教授(プリンス・オブ・ソンクラ大学口腔・顎顔面外科学)
今回は歯科医学研究者のみならず、消化器外科学、眼科学といった上皮細胞再生医学研究者や、「魚のウロココラーゲン」という豊富な天然海洋資源の医療への応用を研究しているグループからの研究者もシンポジストに迎え、非常にユニークな講演を聴くことができました。会場からも関心は強く、活発な質疑応答が行われました。
Ⅰ-a :口腔粘膜上皮細胞の「光と影」
- PRF(Platelet-rich Fibrin)による硬組織・軟組織の再生促進 - 研究から臨床まで:
Prisana Pripatnanont 准教授(プリンス・オブ・ソンクラ大学口腔・顎顔面外科学) - 組織工学による再生口腔粘膜の臨床応用 - 試練と成果:加藤寛子リサーチフェロー
(ミシガン大学) - 培養口腔粘膜上皮シートの眼科における臨床応用、および上皮幹細胞についての新知見:血球系幹細胞との比較から
梅本晃正助教(東京女子医科大学・先端生命医科学研究所) - 自家口腔粘膜上皮細胞シートを用いた内視鏡切除術後の食道粘膜再生 - 現状と展望:金井信雄助教(東京女子医科大学・先端生命医科学研究所)
Ⅰ-b:魚コラーゲン-医療/産業用に向けた新規生体材料
- 魚コラーゲンの生化学的・分子生物学的特性:都木靖彰教授(北海道大学・水産学部)
- 魚のウロコから抽出したコラーゲンの物理化学的特性:生駒俊之准教授(東京工業大学・材料工学専攻)
- 魚コラーゲンを用いた細胞培養スキャフォールドとハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体の開発:許哲峰助教(広島大学・工学部)
- 単方向性多孔質構造を有した骨移植材についての知見:白井誉訓研究員(株式会社
クラレ) - ティラピアウロココラーゲンの歯科臨床応用:柏崎晴彦助教(北海道大学・高齢者歯科学)
- 魚コラーゲンを用いた生体材料開発についての基準とガイドライン:土屋利江客員教授(国立医薬品食品衛生研究所/東京医科歯科大学)
シンポジウムⅡ: Global Oral Health Science Education
国際口腔保健科学教育シンポジウム
- 座長
- Yupin SONGPAISAN特任教授
これまで3年をかけ、Yupin SONGPAISAN特任教授を中心に、国際口腔保健医療専門家育成コース(大学院博士課程)のカリキュラム作成を進めてきました。カリキュラム完成を間近に控え、国内外から意見をいただいて最終ブラッシュアップするため、本学演者よりその目的とコンテンツを解説しました。また国内からは広島大学での学部生レベルからの国際化教育をご紹介いただき、インドネシア・タイの各大学からは、学部/大学院で実際に行っている各専門を越えた連携教育や、口腔保健に問題を抱えている地域に実際に赴いて解決に取り組むエクスターンシップの実践について詳しく解説していただきました。本カリキュラムにおいても積極的に英語環境による学修を取り入れ、エクスターンシップを重要と位置付けているので、各大学の取り組みは非常に参考となるものでした。
Ⅱ-a:日本国内での国際口腔保健科学への取り組み
- 国際口腔保健を遂行する人材とは:宮﨑秀夫教授(本学・予防歯科学)/
Murray THOMSON 教授(ニュージーランド・オタゴ大学) - 新潟大学における国際口腔保健科学教育:小川祐司准教授(本学・予防歯科学)
- 広島大学における歯学部国際化教育:高田隆教授/前歯学部長(広島大学・口腔顎顔面病理病態学)
Ⅱ-b:外国の大学における国際口腔保健科学教育・学外エクスターンシップの実践例
- インドネシア大学における専門連携教育(インター・プロフェッショナル)の実践:
Bambang IRAWAN 教授/歯学部長(インドネシア大学) - コンケン大学における国際口腔保健学教育:
Waranuch PITIPHAT 教授(タイ・コンケン大学) - プリンス・オブ・ソンクラ大学における学外エクスターンシップの実践:
Songchai THITASOMAKUL 准教授(タイ・プリンス・オブ・ソンクラ大学)
新潟大学/ASEAN歯学部長会議:Education and Research Collaboration
前回のシンポジウムに引き続き、新潟大学/ASEAN歯学部長会議と題して、ASEAN諸国の大学歯学部長・国際交流担当/教育担当/研究担当副学部長など22名の参加を得て、朝食をとりながらの会議を行いました。本プロジェクトに基づいて行ってきた数々の事業に関して各大学への謝意を表し、学生・研究者交流をいっそう発展させるべく、意見交換を行いました。さらなる学部/大学院/研究者・教員レベルの交流と相乗効果が期待できます。
特別講演
2013年11月に口腔解剖学分野の准教授として着任された大峡淳先生から、”The Role of OFD1 in Tooth Development”(歯牙発生におけるOFD1遺伝子の役割) と題した特別講演をいただきました。着任前はKing’s Collage London(イギリス) に主任研究者として長く在籍されており、流暢な英語で熱意溢れる講演は口腔組織発生学への関心を強く呼び起こす内容で、大学院生・外国人参加者にもとても印象深いものでした。
研究発表セッション
昨年で終了した「若手研究者派遣事業」では多くの若手研究者が短期~長期にわたり、支援を受けて海外留学を経験いたしました。本シンポジウムでは主に本事業による留学経験者の成果を相互に発表する機会として、研究発表セッションを設けました。
25題の口演発表と、21題のポスタープレゼンテーションが行われました。本学からは、口腔解剖学、予防歯科学、齲蝕学、顎顔面外科学、歯周診断・再建学、小児歯科学、歯科矯正学、摂食嚥下リハビリテーション学、包括歯科補綴学、生体歯科補綴学の各分野から合わせて21名が発表いたしました。本学とプリンス・オブ・ソンクラ大学のほか、タマサート大学やインドネシア大学・ガジャマダ大学から、国内では大阪大学と九州大学からの大学院生が発表されました。英語での口演発表を初めて経験する大学院生もおり、難しいと感じながらもディスカッションでは非常に刺激を受けたという声を多く聞きました。今後の研究者としてのさらなる成長に良い影響を与えられたと思います。