口腔内を清潔にすることは、ただ単に歯垢を取り除き口腔内を清潔に保つということだけではなく、全身の健康、食への意欲、口臭予防、人との交流促進などの効果があります。
要介護者は、脳血管障害の後遺症による麻痺をともなっていることが多く、特に麻痺側には、食べ物や歯垢が残りやすいなど、注意が必要となります。また、入れ歯などを使用していることも多く、要介護者本人だけでなく、介護者による清掃が必要になります。さらに高齢者は、反射機能の衰えにより、嚥下反射機能が低下して、食べ物が喉頭から気管へ誤って流れ込むことがあります。その際、異物を咳反射で出そうとしても、高齢者の場合は、力が弱くて完全に排出することができず、一部が気管内に取り残されてしまいます。口腔清掃が不十分な場合、口腔内細菌が気管から肺に入り込み、誤嚥性肺炎の原因にとなります。
また、口腔清掃は要介護者自身の生理的な自浄作用無くして達成されないので、麻痺した機能への直接的なアプローチが必要で、間接的な機能訓練の側面も持っています。
◆口の中を清潔に保つと、次のような効果があります。
1. |
むし歯や歯周病などの口腔疾患の予防 |
2. |
誤燕性肺炎の予防 |
3. |
咀嚼、摂食・嚥下、発音、審美性などの機能の維持 |
4. |
唾液分泌の促進 |
5. |
口臭の除去、爽快感 |
6. |
正常な味覚の維持・・・美味しく食べる楽しみ |
7. |
手足のリハビリテーション |
8. |
精神的な安定 |
9. |
全身の健康につながる |
10. |
家族や社会との関係の維持・・・会話などのコミュンケーション向上 |
◆口腔清掃をする際に気をつけること
1. |
安全で楽な姿勢をとりましょう
体位の工夫で口腔清掃をしやすく、誤嚥などの危険のない姿勢をとることを考えましょう。できるだけ起こした状態に、無理な場合は、誤嚥を防
ぐ為に身体を横向きにしましょう。片麻痺がある場合は、麻痺側を上にし(健側を下に)、クッションやタオルなどを使い安定した姿勢を保つようにしましょう。 |
2. |
うがいをしましょう
毎食後お茶などで食べかすを洗い流しましょう。 |
3. |
歯を磨きましょう |
4. |
入れ歯も清潔にしましょう |
5. |
入れ歯のない人も口の中を清潔にしましょう |
6. |
舌の清掃 |
◆介助法について
《全介助》・・・ 要介護者本人の意識、理解と同様に、介護者に対しても動機づけが必要となります。つい力が入りがちになりますので、軽いタッチでを心がけるようにしましょう。
《部分介助》・・・ 自立やリハビリなどを促す面からも、本人が出来ることは自分でやってもらい、手を添えたり、コップを運んだりなどの手助けをしましょう。できるなら仕上げ磨きをしましょう。
《自立》・・・ ブラッシングを始める声がけをしたり、歯ブラシを手渡したりして口腔内を清潔にする習慣付けをしましょう。自立しても完全に清掃されているとは限りませんので、介助者による仕上げ磨きが必要な場合があります。
◆まとめ
口腔清掃は、毎食後行うことが望ましいですが、1日1回でも徹底した口腔清掃を行えば、衛生面の問題はほとんど解決します。嚥下障害のある場合は、夕食後か就寝前に行うようにしましょう。なお、一度に行うことが難しい場合は、時間や部位を分けて行うように工夫しましょう。
口腔内を100%きれいにすることは大切ですが、それ以前に、口腔清掃を自らの手で行おうとする意欲や自立した行為を高く評価したいものです。
[地域保健部員 高橋 堅護] |