口腔ケアの重要性とポイント口腔清掃|摂食・嚥下障害について|誤嚥性肺炎

 

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U.摂食・嚥下障害者に対する治療(訓練)及びリハビリテーション

1.包括的な治療の必要性

 対応については多職種による多方面からのアプローチが必要となる。基本となるものは直接訓練、全身状態の管理、口腔ケアの3つである。
 特に口腔ケアによる大きな効果としては、口腔内の細菌を減少させることで誤嚥性肺炎の危険性を減らすことと、口腔内の感覚、運動に対する刺激効果の2つがあげられる。

 

2.理学療法

(1)直接訓練(摂食訓練)

 飲食物を用いて摂食・嚥下機能を高めることを目的とする。実際の訓練にあたっては適切なテクスチャー(食物における '味' 以外の形状の性質。例えば硬さ、なめらかさ等)をもつ食物を用意し、準備運動や姿勢等も含め、十分に注意して行う。

 

(2)間接訓練

 飲食物を用いずに摂食・嚥下に関わる器官の働きを改善させることを目的とする。問題のある器官や病状により具体的な訓練方法が選択される。
  ・頸部のリラクゼーション
  ・口腔周囲筋群・舌筋群の運動訓練
  ・口腔内のアイスマッサージ
  ・構音訓練
  ・呼吸訓練
  ・発声訓練
  ・嚥下パターン訓練
  ・喉頭閉鎖訓練
  ・メンデルゾーン手技
  ・バルーン拡張法

 

3.外科的治療法

 誤嚥を防ぎ、経口摂取が可能となることを目的とする。

(1)機能的補助的手術治療(その手術の目的と具体的な手術方法)

  〈咽頭圧上昇〉−−−−−−咽頭弁形成術 咽頭縫縮術
  〈食道入口部拡大〉−−−−輪状咽頭筋切断術
  〈喉頭挙上〉−−−−−−−喉頭挙上術 舌骨下筋群切断術
  〈声門閉鎖不全の改善〉−−声帯内方移動術 声帯内注入術

 

(2)気道と食道の分離

  喉頭温存的手術一喉頭閉鎖術  気道食道分離術
  抜本的治療  一喉頭全摘術

 

4.代償的栄養(摂取)法

 経口摂取が困難な場合、また経口摂取では十分な水分や栄養が取れない場合に用いる方法である。

(1)中心静脈栄養法(経静脈的栄養法)

 中心静脈ヘカテーテルを挿入し行う。機能的嚥下障害では、その長期的使用は恒常性への影響や感染という問題から推奨されない。

 

(2)経鼻経管栄養法(NG法)

 鼻の穴から栄養チューブを挿入し、その先端を胃、十二指腸、上部空腸に留置する方法である。意識障害を伴う嚥下障害の急性期には、本法と1)の方法が有用である。

 

(3)胃瘻

 外科的胃瘻造設術による方法と、内視鏡を用いた経皮的視鏡的胃瘻造設術(PEG)の2法がある。PEGは2)の方法に代わる長期的管理法として広まりつつある。栄養状態の改善は2)の方法に比し確実であり、誤嚥性肺炎に対する防止効果も勝る。

 

(4)間歇的経管栄養法(IC法)

 口腔ネラトン法(OE)、intermittent tube feeding(ITF)と同じ方法である。チューブを栄養補給時にだけ経口的に挿入し、チューブの先端は食道に留置する。チューブの挿入により間接的嚥下訓練効果を現す可能性がある。

 

[地域保健部員  太田 啓子]

【参考文献】
・金子芳洋、千野直一監修:摂食・嚥下リハビリテーション、第1版、医歯薬出版、1998.
・介護・医療・予防研究会編:高齢者を知る事典、第2版、厚生科学研究所、2000.
・金子芳洋:介護関連職種との連携に必要な摂食・嚥下障害の知識、日本歯科医師会雑誌、vol. 53 No.7, 610−622, 2000−10.
・摂食・嚥下障害へのアプローチ‥在宅・施設における歯科の対応、日本歯科医師会、1997.
・西尾正輝:摂食・嚥下障害の患者さんと家族のために、第1版、インテルナ出版、1999.

 

 

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