各種歯科疾患の診断・治療には、たとえばX線の透過度、歯周ポケットの深さ、う蝕除去における検知液の利用、支台歯軸面の理想的なテーパーなど、それぞれ細かい基準が設けられています。
したがって、適切な歯科治療を行うためには、これらの基準に照らし合わせることが欠かせません。
一方で治療の効果を客観的に評価することは簡単ではありません。古くは顎運動検査、筋活動検査などが主流でしたが、近年ではCTやMRIなどの画像診断装置や内視鏡を利用することによって、これまで見えなかった体内或は組織の形態等を評価できるようになってきました。さらにはIT技術の向上に伴い、様々な機能評価装置が登場しています。
このようなハードの充実により、適切な治療の基準、治療による患者の主観的、客観的評価の基準が定まりつつあります。しかし、治療中の術者の姿勢や視線、対象歯との距離、加える力の大きさや方向などは非常に重要であるにも関わらず、感覚的あるいは経験的に会得されることが多く、言葉や文章で表現しづらい上に客観的な研究データに乏しいため、歯科臨床教育担当者にとって悩みの種になることがあります。
当分野では、歯科治療の手技に関して客観的且つ学習者にとって理解しやすい基準を探ることにより、効率的な臨床技能教育の手法を開発し、実践することを目的として研究に取り組んでいます。
また、質の高い歯科治療を提供することを目的として開始された歯科臨床研修制度について、研修歯科医のみならず、指導歯科医、コデンタルスタッフ等、臨床研修の実態に関わるスタッフを対象として調査、研究を行い、歯科臨床教育の継続的な改善・充実を目指しています。
本分野の研究は、歯科臨床教育に関する画期的な手法、器具、装置などの開発とその実践を目標としています。現在、主として歯科診療技術そのものを評価する研究や、そこで明らかになった事柄について初心学習者へ教育する方法についての研究を行っています。また研修歯科医、指導歯科医、コデンタルスタッフの評価、要望等の調査を行っています。
各種歯科治療にはそれぞれの場面において患者、あるいは患歯に対して適切な力を加えることが必要と考えています。術者が患者あるいは患歯に加える力は大きすぎても小さすぎても、治療結果に好ましくない影響を与え、場合によっては医療事故の原因にもなり得ます。
フォースゲージはセンサーに加えられた力の大きさを計測する装置です。下顎模型にフォースゲージを組み込んだマネキンを開発し、様々な歯科治療を題材に適切に処置を行うための最適な力と、その力を学習する方法について検討しています。
各種歯科治療手技には、適切な姿勢、インスツルメントの把持、動かし方があります。これらが不適切であった場合、インスツルメントの動作の精確性が低下すること、そのために治療結果に差が生じることや術者に過度な負担がかかることが考えられます。
VICONは複数台の赤外線カメラを用いて、体表などに貼付した赤外線反射マーカを読みとり、その三次元的な位置を計測する装置です。
VICONを用いて各種治療手技における術者の姿勢、動きを計測し、そのコツとなる特徴を調査しています。
研修歯科医から指導歯科医への評価、コデンタルスタッフから研修歯科医への評価などに関するアンケート調査を行っています。
当分野/診療科の研究の詳細に関しては、業績のページをご覧下さい。