実施報告

国際口腔生命科学コース設置にかかる現地視察調査等報告書

出張期間:
平成17年12月1日(木)〜12月5日(月)
出張者:
(教員) 前田健康 教授、魚島勝美 教授、 林孝文 教授
(事務) 佐藤明裕(教務課教育実施係長)、土田啓子(歯学課庶務係主任)

平成17年12月1日から12月5日にかけて、上記の者がタイのナレスアン大学に赴き、国際口腔生命科学コース設置にかかる概要説明及び現地調査を行った。

また、医歯学総合病院 教授である魚島勝美、医歯学系口腔生命科学系列教授 林孝文については、それぞれ別途研究用務で同大学に赴いており、合同で現地調査を行ったものである。

調査項目等については、以下のとおりであり、学部間交流協定、国際口腔生命科学コースにかかる計画内容の協議から実施する場合の現地の環境及び当該国の状況に及ぶ広範囲の調査となった。

調査項目

1.学部間交流協定の締結に向けた合意
2.国際口腔生命科学コースの概要説明
3.実施計画協議事項について
4.拠点校の設備の状況について(ハード面)
1.教育研究設備の状況調査
2.e-learning設備の状況調査
5.拠点校の教育研究の状況(ソフト面)
1.管理運営状況調査
2.カリキュラム、学則等の調査
3.教育研究組織の調査
4.教育研究レベルの調査
6.当該国の状況
1.社会情勢、物価、治安等の調査
2.教育制度の調査
3.口腔疾患に関する教育研究及び診療の状況調査
概要:
ナレスアン大学歯学部において、学部長であるVisaka Limwongse教授他各学科の学科長5名の同席の下、前田教授、魚島教授及び林教授から、学部間交流協定及び本教育プログラムの概要について、持参した協定書(案)、プログラム概要、歯学部概要、大学概要等により詳細に説明及び意見交換を行い、ナレスアン大学歯学部から概ねの合意をいただいた。概要は以下のとおり。

1.学部間交流協定の締結に向けた合意

持参した新潟大学歯学部とナレスアン大学歯学部との交流に関する協定書(案)により、交流協定の締結に向けて合意を図った後、Visaka Limwongseナレスアン大学歯学部長から学部間交流協定の締結については、ナレスアン大学長の合意が必要であるとの説明があり、今後大学長へ締結に向けて検討を行うとの説明があった。

2.国際口腔生命科学コースの概要説明

前田教授から国際口腔生命科学コースについて、「国際口腔生命コース概念図」等の資料により以下のとおり説明を行った。

1. 国際口腔生命科学コースの概要について

1 履修概要
1年目:新潟大学にて基礎を学ぶ
2年目〜4年目:ナレスアン大学で単位取得、研究指導、論文の作成
2 学位
新潟大学から博士(歯学)を授与
3 役割
1.新潟大学の役割
新潟大学における初期教育としてのコースワーク及びナレスアン大学における研究指導、論文作成指導及び教育プログラム・研究テーマの策定、学位審査等、教育指導全般を行う。
2.ナレスアン大学の役割
ナレスアン大学における研究指導補助、学位審査等、教育指導補助を行う。
3.各大学における施設使用に関する費用は、当該大学で負担する。
4 教育方法
1.新潟大学における教育方法:
新潟大学教員が英語で行う。
2.ナレスアン大学における教育方法:
新潟大学教員がe-Learning等の活用又は短期集中講義で行い、ナレスアン大学教員が研究指導補助を行う。

2. 費用負担

1年間の日本における滞在費用及び渡航費用並びに在学中の大学院授業料は新潟大学側が負担するよう努力する。

3.実施計画協議事項について

1.プログラム実施計画協議

  • 当該留学生の経済的負担を押さえるため、大学院の課程4年間のうち、当初の1年間を新潟大学で、以降をナレスアン大学で学習させること
  • 学生にかかる入学料、授業料、日本における生活費等の経費については、新潟大学側が負担するよう努力すること
  • 新潟大学及びナレスアン大学の教員に係る旅費、最低限の設備備品等の本プログラムの実施経費については、新潟大学側が負担すること
  • 2年目以降の教育実施に関する教室等最低限の設備は、ナレスアン大学側の施設を使用させていただくこと
  • 教育の質を保つため、新潟大学の教員が定期的にナレスアン大学に赴き的確な指導を行うこと
  • 教育の一部をナレスアン大学教員から補助していただくこと
  • 博士課程を修了し論文審査に合格した者には、新潟大学の学位が授与されること
  • 2006年4月入学者の見込みについての確認又は10月入学者の見込み

本プログラムの概要について説明を行った後、上記について協議した結果、概ねの合意が得られたが、ナレスアン大学側から大学院課程の1年目はナレスアン大学で基礎学習を行い、2年以降の1年間を新潟大学で学習する方がよいのではないかとの意見があった。

また、入学見込みについては早くとも2006年10月になるのではないかとの意見があった。

4.拠点校の設備の状況調査

1.教育研究設備の状況調査

  • 学部学生教育の機器
  • 臨床実習用歯科診療ユニット及び周辺機器等
  • 大学院学生及び研究者用の実験機器等

2.e-learning設備の状況調査

ITキャンパスがチェンマイにあり、他にカンペーンペット、ナコーサワン、ペチャブーン、パヤオ、プレ、スコータイ、ターク、ウタラジットのそれぞれキャンパスがある。

本学が計画しているe-learningを用いた教育方法を実践するための設備、教室の確保についての確認

5.拠点校の教育研究の状況(ソフト面)

1.管理運営状況調査

ナレスアン大学の学部は健康科学、社会科学、情報科学の三つの群に分類されており、歯学部は健康科学群に配置されている。

健康科学群の学部
保健学関連学部、歯学部、医療科学部、医学部、看護学部、薬学部、公衆衛生学部

歯学部について

※ナレスアン大学歯学部ホームページから抜粋

理念:
ナレスアン大学歯学部の目標は、健康増進、口腔健康問題の予防と治療の分野において熟練した技術を持つ高レベルな道徳的歯科医師を育成することである。さらに口腔医学と歯科教育・知識の発展は、口腔治療が必要としている事に適応するための研究の先駆けとなることを目指す
使命:
ナレスアン大学歯学部の使命は、知識、道徳、社会的及び専門的倫理、すぐれた洞察力、熟練した技術を追求する歯科医師を育成することである。
目的:
1 歯科医を育成すること
2 歯科医のスペシャリストを育成すること
3 歯科アシスタントを育成すること
4 研究指導と予防・治療のデンタルサービスを提供すること
学科:
予防歯科学講座
修復歯科学講座
歯科病院講座
口腔診断学講座
口腔生態学講座
得られる資格:
歯学(博士)、歯科助手免許

2.カリキュラム、学則等の調査

博士(歯科外科学)の教育課程カリキュラム

カリキュラムは、下記のような3つのコースから構成される

履修単位  
30 1.教養課程
21 1.1 教養必修科目
9 言語学
3 人類学
3 社会科学
3 身体健康学
3 学部関連科目
9 1.2 教養選択科目
3 人類学
3 社会科学
3 科学・数学
211 2.専門課程
70 基礎医学
141 専門教育
6 3.選択課程
247 合計

3.教育研究組織の調査

ナレスアン大学は58以上の学部コースと55の修士コースをもつ総合大学である。

分野は、農業サイエンス・天然資源・環境科学・健康科学関連・建築・歯学・教育・工学・人文学・社会科学・薬学・看護・調剤学・法律・医学・理学に分かれている。

現在、25,000人の学生が在籍、1,500人の職員が勤務している。

4.教育研究レベルの調査

ナレスアン大学はタイ王国北部のピサノロークに位置し、1990年に国立大学として創立された。創立後長い歴史があるわけではないが、タイにおける最も進歩的な大学のひとつであるとの評判を得ている。

学部学生の70%は北部のパヤオという地区から通っており、残り30%は国内全域からで、国内選抜試験を受験してからの入学となる。他大学からの交換留学生は優秀な成績を修めた者であれば国内外を問わず入学を受入れている。

大学院生はフルタイム、あるいはパートタイム(夜間課程、土曜から日曜に行う特別課程)での入学が可能。

6.当該国の状況

1.社会情勢、物価、治安等の調査

人口:
6,197人(2004年)
GDP:
1,635億ドル(2004年)
 
一人当たりGDP:
2,236ドル
 
経済成長率:
6.1%(2004年)
物価上昇率:
2.7%(2004年)
 
失業率:
2.1%(2004年)
総貿易額:
輸出 961億ドル(2004年)
輸入 944億ドル(2004年)
通貨:
バーツ
為替レート:
1ドル=約40バーツ(05年10月現在)
経済状況:
タイは80年代後半から日本を始め外国投資を梃子に急速な経済発展を遂げたが、その一方で経常収支赤字が膨張し、不動産セクターを中心にバブル経済が出現した。その後、バブル破壊に伴い不良債権が増大し、経済の悪化を背景にバーツ切り下げの圧力が高まり、97年7月、為替を変動相場制に移行するとバーツが大幅に下落し、経済危機が発生した。タイ政府は、IMF及び日本を始めとする国際社会の支援を受け、不良債権処理など構造改革を含む経済再建に努力した。タイ政府の財政政策を含む景気対策、好調な輸出などにより低迷を続けていた経済は回復基調した。
2001年2月に発足したタクシン政権は、従来の輸出主導に加えて国内需要も経済の牽引力とすることを訴え、農村や中小企業の振興策を打ち出した。これらの内需拡大政策の奏功と見られる個人消費の活性化等により、経済は回復し、2003年は6.9%、2004年は6.1%の成長を達成した。

2.教育制度の調査

タイの教育制度は、現在6・3・3制がとられており、ナショナル・アイデンティティ高揚のための教育が重視されているのが特徴。

義務教育は、7歳から13歳までの初等教育の6年間。

初等教育:
教科別の編成ではなく、基礎的技能、生活経験学習、人格教育、勤労体験学習といったカリキュラムが組まれているのが特徴です。なかでも、従来の社会科と理科を統合し、自然と社会への適応を目的として経験学習を重んじた生活体験学習、実際に農作業や技術工作を行なわせる勤労体験学習は特色あるものです。
また、タイでは伝統的に国家、国王、宗教などが重要視されており、国旗掲揚、国家、国王歌斉唱などの教育活動を通したナショナル・アイデンティティ高揚が図られている。
初等義務教育は1987年現在の就学率94%とおおむね普及している。
中等教育:
3年制の中学校と3年生の高等学校があります。
中学を修了したものはそのまま3年制の高等学校に進学するか、職業学校に進学します。
タイの中等教育はまだこれからといった段階で、1987年の統計では中学校の全国平均就学率は32.9%、高等学校は24.1%でした。
高等教育:
高等学校修了者は大学・カレッジ・教員養成大学、高等専門学校に進学できます。
タイの伝統的な大学は従来バンコクに集中していましたが、1960年代になると地方大学が設立され、1969年には私立大学法の制定にともなって私立大学が誕生しました。
また1970年代からは公開大学も設立され、通信教育による高等教育も盛んです。
高等教育機関の入学者選抜には、全ての国立大学、数校の私立大学、カレッジが参加して行われる統一試験と、私立大学が独自に行う入学試験の2種類があります。

3.口腔疾患に関する教育研究及び診療の状況調査

ナレスアン大学歯学部は歯科医師の育成や歯科サービスの伝道だけでなく、その他の社会的・学術的活動を行っている。例として下記のような活動である。

王立歯科移動ユニット(ナレスアン大学移動サービスとの共同)
診療を受けられない人々に無料で歯科治療(歯科保存学、抜歯、歯の掃除、歯の入れ替え)を提供するもの
健康に関する展示
タイの音楽演奏
歯科診療内容
口腔検査と診断
口腔外科、抜歯、埋伏した歯の外科的除去
小児歯科
保存歯科、歯根管治療
歯肉と歯周病の治療
歯科矯正治療と歯科補綴

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