⼝腔保健学分野の吉⽻永⼦教授と、⾼度⼝腔機能教育研究センターの前川知樹研究教授らを中⼼とした研究グループは、⼤阪⼤学蛋⽩質研究所の関⼝清俊寄附研究部⾨教授と共同で免疫細胞であるマクロファージが樹状細胞様細胞へと変化する新たなメカニズムを解明しました。本研究では、細胞外マトリックス成分のラミニン(注1)α2 鎖とその受容体であるインテグリン(注2)α7 が、マクロファージの樹状細胞様細胞への分化プロセスにおいて重要な役割を果たしていることが明らかになりました。特に、インテグリンα7 の結合が阻害されると、マクロファージは樹状細胞様細胞に変化することが確認されています。この発⾒は、インテグリンα7 を標的とした腫瘍治療の新たなアプローチにつながる可能性があり、がん治療や免疫療法における新たな道を切り開くものとして期待されます。
(注1)ラミニン
α鎖、β鎖、γ鎖が会合した⼗字架の様な構造をしています。α鎖は5 種類 (α1-α5)、β鎖は3 種類 (β1-β3)、γ鎖には3 種類(γ1-γ3)あり、代表的な接着性マトリックスとして、基底膜を構成しています。知られている19 種類のラミニンアイソフォームは組織特異的に局在し、細胞の表現型や分化パターンを調節しています。
(注2)インテグリン
細胞外マトリックスのレセプターとして細胞内部の⾻格をつなぎ、細胞の動きや形態維持において不可⽋な役割を果たしています。αとβサブユニットからなり、ラミニンに結合するインテグリンとしてはα7β1、α3β1、α6β1、α6β4 の4 種類があります。ラミニンアイソフォームに対するインテグリンの親和性はそれぞれ著しく異なることが知られています。
研究成果発表論文
掲載誌:Journal of Biological Chemistry
論文タイトル:Loss of integrin alpha7-mediated signaling induces a dendritic cell-likephenotype in macrophages cultured on laminin-211/221 isoforms
著者:Nagako Yoshiba, Tomoki Maekawa, Kiyotoshi Sekiguchi, Masaru Kaku, KridtapatSirisereephap, Meircurius Surboyo, Yurie Sato-Yamada, Andrea Rosenkranz, AkihiroHosoya, Naoto Ohkura, Yoshito Kakihara, Takeyasu Maeda, George Hajishengallis, Kenji Izumi, Kunihiko Yoshiba
doi:10.1016/j.jbc.2025.110419