高度口腔機能教育研究センターの前川知樹准教授が全米医学アカデミーのカタリスト・アワードを受賞しました

2021年09月28日 トピックス 研究結果

 

高度口腔機能教育研究センターの前川知樹准教授が、全米医学アカデミー(National Academy of Medicine; NAM)の提唱する「Healthy Longevity Grand Challenge(HLGC):健康長寿に向けた課題解決」のカタリスト・アワードを受賞しました。

「Healthy Longevity Grand Challenge(HLGC):健康長寿に向けた課題解決」は、世界各国で進行する高齢化社会の課題を解決すべく、人々の健康長寿に資する幅広いジャンルの優れたアイディアを世界各国から募り、イノベーション創出を促進するものです。全米医学アカデミーのほか、日本の国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)など海外の9機関が協調し参画しています。

カタリスト・アワードは、健康長寿の実現に資するシーズとなり得る新しい、革新的なアイディアとして選出されるものです。
令和3年9月22日にオンラインで開催された「Healthy Longevity Global Innovator Summit」にて、第2回カタリスト・アワード受賞者が発表され、前川准教授が受賞者に選ばれました。

受賞の対象となった研究課題

The Correlation of ectopic calcification signatures in the ageing eye and cardiovascular system
(加齢に伴って増加する網膜と⼼臓⾎管の異所性石灰化の相関についての基盤研究)

研究概要

加齢や老化に伴い、心臓や脳の血管、さらに眼の組織において石灰化がおきます。これらを異所性石灰化と呼び、失明となることが多い加齢性黄斑症や致死率の高い脳卒中、心不全の主な原因となります。しかし、老化による異所性石灰化の原因と治療法については不明な点が多いのが現状です。

近年、動物モデルにおける非侵襲的な網膜イメージング(OCT)が開発され、血管組織および網膜の両方で、おなじような異所性石灰化が認められることが報告されています。網膜OCTは、血管の内部を直接見る場合と比較し、侵襲性が低く、安価なため、使用へのハードルが低いことが挙げられます。したがって、網膜石灰化と心血管系石灰化間に相関関係が存在する場合、網膜OCT による心血管系の石灰化診断に応用できる可能性が高いと考えています。

また、本研究では老化に伴い減少するDEL-1にも着目しています。予備実験から、加齢マウスより取り出した血管の細胞および網膜の細胞において石灰化の形成とそのメカニズムに相関関係が存在することが明らかになりました。さらに組換えDEL-1 を加えると石灰化の抑制が認められたことから、DEL-1による異所性石灰化の治療戦略が考えられます。

つまりA)網膜イメージングを利用し、非侵襲的に心血管系の異所性石灰化を予測することが可能となり、健康長寿のための先制医療の開発につながります。これらの臨床研究は、米国およびシンガポールにおいて進行中であり、今後の発展が見込まれます。さらにB)DEL-1もしくはその誘導剤が、老化に伴う異所性石灰化および炎症や線維化を抑制することが可能となれば、健康長寿に寄与する新しい治療戦略の提供が可能となると考えられます。こちらは、DEL-1誘導薬剤の選定が完了しており特許申請されました。

関連サイト

Healthy Longevity Global Grand Challenge

Catalyst Award Winners

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