予防歯科学分野

分野長  小川 祐司

face

教育内容

予防歯科学 Preventive Dentistry
衛生学 Public Health

研究内容

○研究テーマ
・齲蝕,根面齲蝕発生プレディクターの特定とリスク別臨床予防プログラムの再構築
・齲蝕予防を目的とするフッ化物応用に関する社会歯科学的研究
・歯周疾患の罹患・進行モデルの構築と危険因子の解明
・全身の健康保持・増進に影響を及ぼす口腔健康関連因子の解明
・地域口腔保健プログラムおよびシステムの構築
・口臭スクリーニング法の開発及び臨床的アプローチ
・グローバルオーラルヘルスプロモーションの実践

1)疫学研究
種々の口腔疾患の疫学研究を行っている。1970年から実施している学校をベースとした齲蝕予防の介入研究の成果は,フッ化物洗口と定期歯科健康診断および選択的シーラントの応用によって,1996年以降モデル地域の11~12歳児の90%がカリエスフリー,齲蝕歯数は一人平均 0.1本というところまで成果を上げてきた。
歯周疾患に関して,1989年から WHO本部を中心とするグローバルネットワークの中で,国民,民族レベルでの歯周疾患の疫学的特性を明らかにしてきた。保健政策立案に必要な基礎データ収集によるWHO Global Info Baseの整備を行っている。
1998年から実施している新潟市の高齢者コホート研究(新潟高齢者スタディー)からは,健康状態に関する様々な口腔と全身の相互関連性や疾患発生・進行の因果関係がわかってきた。
ミャンマー,スリランカ,カンボジア,ラオスの歯科大学・保健省と共に,国家の口腔保健政策立案を目的とした口腔疾患の発症と生活習慣の関連などを含むベーシックな疫学研究を行っている。これらの研究はWHO協力センター活動の一環として行われている。

2)臨床研究
抗菌剤を併用した歯周治療が糖尿病のインスリン抵抗性の改善に与える影響について内科学教室と共同で臨床介入研究を実施している。
口臭検査に特化した簡易型ガスクロマトグラフィーの開発に関与し,度重なる臨床試験を経てその有用性を確認した。口臭治療のためには,塩化亜鉛含有の洗口剤・スプレーが有効であることを確認した。また、植物由来のプロテアーゼが舌苔コントロールに有効であり、口臭を抑制することも臨床試験で確認した。

3)基礎研究
代表的な齲蝕原性菌、Streptococcus mutansのグルカン合成能に注目した齲蝕活動性試験の開発に向けて、基礎研究を行っている。

臨床内容

◯PMTC
歯科医師や歯科衛生士による徹底した歯面清掃をPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)といいます。専門的な機器やフッ化物研磨剤を用いて、歯磨きだけでは落としきれない歯石や磨き残した歯垢を中心に全ての歯面の清掃と研磨を行い、むし歯や歯周病になりにくいお口の環境を整えます。
また、歯の汚れを赤く染め出して歯磨きの弱点を指摘し、適切な歯磨きが実践できるように、良い歯ブラシの選び方・持ち方・毛先の当て方・動かし方・力の入れ方、歯間ブラシやデンタルフロスなどの使い方を指導します。
◯フッ化物応用
フッ化物応用は歯質のむし歯抵抗性(耐酸性の獲得・結晶性の向上・再石灰化の促進)を高めてむし歯を予防する方法です。全身応用(経口的に摂取されたフッ化物を歯の形成期にエナメル質に作用させる)と局所応用(フッ化物を直接歯面に作用させる)があります。
当科では、以下のようなフッ化物応用を行っています。
・フッ化物洗口(永久歯のむし歯予防)
・フッ化物ジェル歯面塗布(乳歯のむし歯と永久歯の根面むし歯予防)
・フッ化物配合歯磨剤(すべての歯のむし歯予防)
フッ化物の安全性は科学的に証明されています。
◯ガスクロマトグラフィによる口臭測定
口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイド)について、ガスクロマトグラフィを使用して量的に評価します。ガスクロマトグラフィは呼気中の化学物質を分離して揮発性硫黄化合物を測定する精密機器で、どの物質がどれだけの量含まれていたかを正確に測定することが可能です。また、口臭を質的に評価するために、専門的知識を持ち合わせた歯科医師が官能試験を行います。さらに、揮発性硫黄化合物は舌の上に溜まっている舌苔から多く産生されるため、舌苔を適切に除去するための舌清掃法について指導を行います。

分野のホームページ

https://www5.dent.niigata-u.ac.jp/~prevent/japanese/index.html

附属病院のリンク

https://www.nuh.niigata-u.ac.jp/departments/dentistry07

社会貢献

2007年2月、日本初の口腔保健に関するWHO(世界保健機関)協力センターに、本学医歯学総合研究科口腔生命科学専攻口腔健康科学講座予防歯科学が指定されました。
WHOの基本理念である「国際的な口腔保健推進」をコンセプトに、
・口腔保健分野の教育、研究プロジェクトを推進し、基礎、疫学研究から応用研究へと展開し、最先端の口腔保健分野をリード
・諸外国の大学や研究機関と連携して多角的教育研究ネットワークを構築し、口腔保健分野の国際的教育研究拠点を形成
・若手研究者を海外に派遣し、また本学に招聘し、将来の口腔保健推進を担う人材の育成と活動の支援
を主要目標としています。
WHO協力センターとしての役割
1. 口腔保健情報システムの構築
WHO国際口腔保健データベースに質の高い情報を提供するために、CPIを用いた歯周病に関する疫学研究とデータ収集の支援を行う
2. 健康な高齢化における口腔保健理論の構築
WHOが定義する健康な高齢化において、口腔保健の意義とその実践の支援を行う
3. 1次予防における口腔保健の推進
WHOが推奨するライフコースアプローチの理論を実践するために、口腔保健を通じての健康推進のエビデンス構築の支援を行う
4. 水俣議定書における歯科用アマルガム使用削減の支援
歯科用アマルガム使用の削減を実質化するための理論と実践の普及を支援

主な研究テーマ図